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 以前、某市町村の幹部職員であるSNS会員の方から興味深い意見の寄稿を受けたことがある。
 今まで懐で温めていたが、今回それを披露させていただこうと思う。

 実は後期高齢者医療制度というのはいわゆる2年前からの医療制度改革の1つに過ぎない。
 全容は厚生労働省HPの医療制度大綱医療制度改革試案を見ていただければ分かる。
 また当ブログでも2年前に特集記事を書いているので、こちらも参考にしていただきたい。

 で、この中でマスコミに槍玉に上げられているのは短期的な施策であるが、実は医療費削減効果が大きいのは中長期的施策のほうである。
 その中で特筆すべきは、病床転換(医療から介護への推進)だ。
 
 長期入院の老人は介護へ移ることが推奨される。
 これは社会的入院を解消し、慢性的な軽症状患者が急性期用のベッドを占有して、医療資源の適正な配分や医療費の高騰を防ぐというのが建前だが、社会保障全体に視野を広げると、別の裏事情も見えてくる。

 そもそも医療保険だろうと介護保険だろうと、高齢者の患者が一定水準の医療と介護を必要としていることは間違いなく、
 保険給付の設定に大きな誤りがなければ、いずれの保険であろうとコストの総和は変わりないはずである。

 現在療養病床にいる患者を介護施設に移したうえでサービスの質を維持するためには、介護施設の医療サービス提供体制を強化する必要があり、結果的に介護保険施設が療養病床に近い形になっていく。
 わざわざそんなことをしなくても、療養病床の介護面を強化して医療面を弱めた新たな施設基準を設定すれば同じことであり、コストの総和で見れば「医療ではなく介護」という絶対的な理由は無い。

 だが、医療と介護に決定的な違いがある。
 それは国庫負担である。

 後期高齢者医療制度と介護保険で財源構成を比較すると、
 社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会(第1回)で配布された資料より、後期高齢者医療における給付費の国庫負担は、定率負担と調整交付金合わせて給付費等総額の33%である。
 これに対し、介護保険施設の介護給付費に係る国庫負担は、定率負担と調整交付金を足して20%に過ぎない。

 つまり、国は単純に療養病床の後期高齢者を介護保険施設に追い出すだけで約4割ものお金が節約できるのである。
 後期高齢者医療については、実際は定率負担と調整交付金に国保と政管健保の後期高齢者支援金にかかる国庫負担分があるので、実際に軽減される負担はもっと大きくなると予想される。

 じゃあこの国が得した分を誰が新たに負担するかということだが、

 都道府県は2倍近くの負担となる。(後期高齢者医療8%→介護保険17.5%)
 市町村は約1.5倍の負担となる。(後期高齢者医療8%→介護保険12.5%)
 実は一番負担が大きくなるのは高齢者自身の保険料で、実に2.5倍もの負担となる。(後期高齢者医療7.7%→介護保険19%、ただし第3期介護保険事業期間)

 前述の医療制度大綱や医療制度改革試案を見ていただければ分かるが、国はこの「高齢者医療の負担付け替え」について都道府県にノルマを課し、強力に推し進めようとしている。

 医療制度大綱には「国民的な合意を得て、公的保険給付の内容・範囲の見直し等を行う。」とあるが、果たして、こうした内容が国民のコンセンサスを得られたものかどうか。

 一方でマスコミは「おたくのところで保険料のミスはありませんでしたか?」とか馬鹿馬鹿しい取材ばかりで、こういう本質的な議論や内容には全く興味が無いらしい。

 やれやれである。

○ 過去の医療制度改革特集記事はこちら


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タグリスト: 医療制度改革, 後期高齢者医療制度, 療養病床,
 厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の「後期高齢者医療の在り方に関する特別部会」の初会合が5日に開かれた。その中で、いわゆる「診療報酬定額制」の導入が検討されているとして、一部で話題を呼んでいる。

 現在の診療報酬は原則として、検査、投薬、処置といった診療行為を積み上げる出来高制である。
 一方で定額制というのは、こうした診療行為の報酬を全て包括してしまい、疾病ごとに定額にするやり方だ。
 実は定額制は新たな手法ではなく、現在も「DPC」という呼び名で、一部の病院で試行的に行われている。
 今回の検討内容というのは要するに、DPCを単なる試行ではなく、スタンダードにしてしまおうということである。

 定額制の詳細な説明や問題点については以下の2つのblogで触れられているので、是非ごらんいただきたい。
 
美しくなることは、健康になること!
http://becomingbeautiful.blog65.fc2.com/blog-entry-252.html
沖縄健康企画
http://yakuzai.exblog.jp/4682824

 さて、今回なぜそういう考えが出てきたかといえば、言うまでもなく高齢者の医療費を抑制するためである。
 
 高齢者の医療費というと、町医者の待合室で老人が井戸端会議をしている様子を思い浮かべるかもしれないが、
 以前の記事でも述べたとおり、費やされる医療費の大半は終末期医療である。外来や薬剤については様々な批判はあれど、その実、額としては微々たるものだ。
 定額制は外来診療にも導入可能だが、早期発見早期治療の妨げになる可能性もあり、削減効果も少ないとなれば、
 やはりメインのターゲットは入院、とりわけ終末期医療にメスを入れるというのが正しい見方であろう。
 (頻回多受診や薬漬け医療を肯定するわけではない。誤解なきよう。)

 ところで、業界ではDPCは一定の成果を得たという評価が大勢だが、筆者はこれに懐疑的だ。
 なぜならば、現在は試行段階であり、「定額」と「出来高」の住み分けが出来ている。
 「定額」で採算の取れない患者を受け入れず、「出来高」病院に紹介するといった逃げ道が用意されているのだ。
 病院が経営努力をすれば、当然そこに行き着くであろう。
 全ての病院がDPCになった場合に上手く機能するか否かは全く保証されていないのである。
 むしろ、包括定額制が原則の介護の世界同様、「おいしくない」患者がサービスを受けられないという結末になるのは、火を見るより明らかだ。
 
 営利追求が容認される介護と、原則慈善事業で営利追求が認められない医療とでは事情が違う、という反論があるかもしれない。
 しかし、現実に老人は90日を超えれば一般病床を追い出されるし、制限日数を超えたリハビリも受けられない。
 厚生労働省はこれらの行為を禁止しているわけではなく、ただ採算が取れない数字に設定しているだけである。
 要するにそういうことなのである。

 終末期医療にメスを入れること自体は悪いことではない。いずれそうせざるを得ないことは以前の記事にも書いたとおりであるし、その必要性も説いてきた。
 問題とすべきはメスの入れ方である。

 なお、定額制についてはこういう意見もある。↓

Kazu'Sの戯言Blog(新館)
http://kazus.blog66.fc2.com/blog-entry-999.html

 記事の中身について野暮なことを言うつもりはない。
 むしろ、率直な意見が辛口ストレートに書かれており、世間様の認識というものを窺い知る良い例だと言えよう。

 人は必ず老い、そして死ぬ。
 例外はない。

 終末期の医療は誰にでも、いずれ直接的に関わる問題なのだ。
 だからこそ、メスの入れ方は十分な議論を行い、国民のコンセンサスを得るべきであるのだが、誤った見識のもとで議論を重ねても得られるものは何もない。
 
 まずは、マスコミの偏重報道を廃し、国民に正しい姿を伝えることこそが先決だ。

 そしてこの考えはそのまま行財政改革や公務員改革にもあてはまるのである。




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タグリスト: 終末期医療, 医療制度改革, 厚生労働省, 後期高齢者医療制度,
 長々と続けてきた医療制度改革の話であるが、最後に原点にたちかえって考えてみたい。

 そもそもなぜ、医療制度改革が行われなければならなかったのだろうか?
 それは国民医療費が増大し、保険財政を圧迫しているからである。医療費が増大したのは、国民が不健康になったとか、薬の無駄遣いが増えたとかいうことではなく、そもそも医療費が多くかかる老人の割合が相対的に増えてきたからだ。

 老人は若年者の5倍の医療費がかかる。
 たった1割の老人が国民医療費の1/3を使ってしまっている。

 
 この政府のプロパガンダの内容に誤りはない。
 だから医療費を抑制しようということである。

 今回の医療制度改革でも「限られた財源の中で、将来とも良質な医療を確保し、持続可能な皆保険制度とするために」高所得や療養病床の老人の負担を引き上げたわけだが、給付の見直し等の短期的施策による効果はたかだが知れている。

 改革の本丸は医療費自体の削減にあり、2015年までの削減予定の2.6兆円のうち、約2兆円に相当する。
 http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/10/tp1019-1b.html
 具体的には予防の強化、すなわち生活習慣病対策であり、健康診断による保健指導が実現のための手段である。

 残念ながら健康診断は万能ではない。
 むしろ、項目の大半が役に立たないものであるという結果が昨年報道された。
 http://inoue0.exblog.jp/1553578
 現状、国はこれに約1兆円投入している。
 眉唾の健康診断で更に2兆円削減とは、錬金術のような話である。

 連載の冒頭にも書いたが、マスコミの記事や社説の多くは表面的、短期的な負担増しか述べず、この本丸部分の実現性に言及しているものは少数しか見当たらない。
 かくもマスコミは質が落ちたか、と嘆息せざるを得ない。
 公務員を叩いている暇があったら、もっと勉強していただき、皆のためになる記事を書いていただきたいと思う。

 さて、マスコミも触れないことを書くのが当blogの趣旨だとも思うので、更に切り込んで行きたい。

 そもそも予防は医療費削減効果があるのだろうか?
 病気の予防をすれば、なるほど、病院にかかる可能性は少なくなる。
 しかし、人は必ず死ぬ。
 病気の予防自体は意味があることであるが、医療費削減につながるかどうかは疑問だ。
 なぜならば死ぬときに医者にかからない者は稀であり、病気の予防は単にそれを先送りにしているだけだからである。

 そして、ここが重要な点であるが、医療費の大半は人が死ぬときに費やされる。
 町医者の待合室で四方山話をしている老人が、日本の医療費を食いつぶしていると思っている方が多いと思うが、それは大きな誤りだ。
 多少古いデータであるが、レセプトの金額の上位10%の患者が総医療費の6割、1%の患者が1/4を使っているという統計結果がある。
 そしてこれら高額レセプトの患者は大半が1か月以内に死亡しているのであり、社会復帰を果たしているものは皆無に近い。

 家族がドクターに「お願いします」と一声かけると、そこに莫大な税金が投入される。それによって、多少の延命が成功したのかもしれないが(これは実証しようが無い。なぜなら延命措置をしなかった場合と比較せねばならないからだ)、逆にいえばその金は他の多くの「これから生きていく人」への福祉に充当できるたかもしれないのである。
 命はかけがえがなく、金では買えない。
 しかし、感情論や精神論だけでは行政はなりたたない。
 少数の死にゆく命のために、どこまで我々は譲歩できるであろうか?

 我々は今までこの部分について議論を避けてきた。
 だが、タブーと言うのは体のいい言い訳だ。
 日本の公的医療制度がぐらついている今だからこそ、終末期の医療について明らかにし、国民全体が真剣に命の値段について議論するべきであると思う。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。
 7月8日、健康指導による医療費削減の実現性について、当初「マスコミ記事は一誌も無い」としていましたが、読売新聞ならびに日本経済新聞において言及されていることが判明しましたので、適切な表現に改めました。




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タグリスト: 医療制度改革, 終末期医療,
 診療報酬請求制度のIT化といって、まず真っ先に連想されるのはお隣の国、韓国である。 

 日本のレセプト電子化の状況は前回述べたが、病院と診療所と薬局でならすと約25%になる。ところが、韓国の電子化率は96%である。
 日本はレセプトの点検や審査を紙ベースの目視で行い、審査支払機関だけでは不十分であるから保険者からも再審査が行われることも述べた。ところが韓国では原則電算上のロジカルチェックしか行われず、目視で内容を精査するのは非常に例外的なケースである。審査支払機関でのチェック後に保険者が再審査を申し出することはない。

 当然人件費も大きく異なる。レセプトが同じ枚数だとすると、韓国における審査支払機関の職員数は、日本のわずか1/4である。審査委員の数は1/8である。なおかつ日本では保険者サイドでも人件費をかけて点検や管理を行っている。この点も考慮すれば、差は歴然である。

 もちろん電子化の効果はこれだけではない。
 全国民5年分、100TBとも言われるレセプトのデータウェアハウスを活用できる強みがある。
 
 実際、韓国に出来て、日本で出来ないことを列挙してみよう。

 ○疾病の流行状況の把握。
 ○患者単位での医薬品の併用禁忌チェック。
 ○不適正な医薬品や血液製剤発生時における、投与患者の検索、追跡調査、補償。
 ○レセプトデータの医学研究への活用。
 ○手術の成功率等、様々な側面からの医療の質評価。
 ○正確な特定傷病患者数の把握。


 この業界の人間であれば、一番最後の項目を見て「おや?」と思われたかもしれない。これについては後で詳述することにする。 

 さて、日本と韓国はどうしてこうも差がついてしまったのか?

 理由の1つとしてコード化がある。

 韓国は1991年にようやく国民皆保険が実現した。決して日本以上に歴史が古いわけではない。
 だが、紙ベースの時代から電子化をにらみ、徹底したコード化の対策に取り組んできたのである。

 日本で電子レセを推進するに当たり、大きな問題となっているのが、傷病名や各種点数表項目のコード化である。
 日本でも韓国でも、特定の診療行為を評価する際には、ベースとなる「基本点数」とボーナスである「加算部分」を組み合わせる方式である。
 例えば、「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」は「再診料」というベース部分に「乳幼児」であることの加算と「時間外」であることの加算が考慮される。
 これは日本でも韓国でも同じである。

 日本の点数表は、この基本点数と各種加算にそれぞれコードが振られている。つまりコードから求めた値を演算しないと「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」を求めることが出来ない。
 ところが、韓国の点数表では「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」というコードが存在する。演算は必要ない。
 電算処理を行ううえで、どちらが有利かは言うまでもないだろう。

 また日本の医療機関ではいわゆる「レセコン」は導入しているが、電子レセの普及は進まないことは以前に述べた。
 要するに、医療機関の立場からすれば、電子レセに切り替えるメリットが余り無いのである。(特に診療所)
  
 その点、韓国は徹底的な利益誘導を行った。

 まず、電子の場合は医療機関に診療報酬を早期に支払い、逆に紙請求の場合は支払を遅らせたのである。
 これは効果的だ。日本でも電子も場合はボーナスが付くが、反面患者負担額にも反映するという悪影響がある。
 当時の韓国での深刻な不況も追い風となった。
 加えて、電子レセに切り替えると、最高6か月間、レセプト審査が免除されるという思い切った施策も行った。
 導入当初だけでなく、1年間行政処分が無いと2年間審査免除というプログラムも併用している(ただし抜き打ち検査は行われる)。
 たとえ査定されても、その理由や内容が細かく書いてあり、病院側が再発防止にフィードバックさせやすいということも好印象となった。
 かくして韓国のレセプト電子化はあっという間に浸透したわけである。
 
 もう1つの深刻な問題として、いわゆる「保険適応病名」問題がある。
 
 業界人であれば周知の事実であるが、日本では「保険病名」あるいは「適応病名」と呼ばれる、保険請求専用のウソ病名がある。
 ある診療行為が患者にとって明らかに必要だとしても、保険として認められないことがある。だからウソ病名を付けてしまえという発想である。
 例えば長く使うと肝臓に負担がかかり、投与中は定期的に肝機能検査を受けなければならないという薬がある。もちろん検査にも相応のコストがかかる。薬のために検査をし、その分持ち出しでは採算が取れない。
 「だったら肝臓の病気にして保険診療として認められるようにしてしまえ」ということなのである。
 もし「強い薬で胃を痛めるから」と併せて胃薬が処方された場合、貴方は胃潰瘍にされているかもしれない。ということだ。
 自分は保険者サイドの人間であるが、この世界に入って長いし、友人に腹を割って話せる医者も数多くいる。両方の内情は理解しているつもりだ。
 誤解を恐れずに言えば、医療機関の診療報酬請求は不正ギリギリのグレーゾーンの領域で行われている。そうしなければならないのは、つまり制度が悪いのである。

 医療機関は請求に不備が無いように、本当の病名によるレセプトを作成したあとで、適用病名を継ぎ足す作業を行う。そして保険者は適用病名もれをくまなくチェックし、バッサリ切りにかかる…。

 こんなナンセンスなことに病院と保険者はしのぎを削っているのである。しかも国保などであれば人件費はつまり税金だ。皆も無縁の問題ではない。
 どちらがが悪い、どちらに責任があるということではなく、こうした(少なくともレセプト電子化という面から見れば)悪しき慣習は無くしていかねばならないと思うのである。

 脱線が過ぎた。こうした話は別の機会を設けてゆっくり書こうと思う。

 本題に戻るが、こんな状態では、せっかく電子化が成されても、データの信用性が低く、使い物にならないのは言うまでもない。
 「胃潰瘍」で検索したら、その中に「なんちゃって胃潰瘍」が数多く混入しているのだから。
 ちなみに韓国ではこうした「保険病名」問題は無いそうであり、質の高い医療情報を確保することが可能なのだそうである。

 さて、こうした問題以外にも、解決せねばならないことは山積みだ。
 もし「レセプトオンライン」という夢のような話を実現するためには住基ネットと同等またはそれ以上のセキュリティを確保せねばならないし、導入費用や基盤整備の問題もある。

 5年間で完全実施できるかどうかはいささか疑問だ。
 ともあれ、現実的な問題として、毎月運ばなければならない多量の紙の山が早く無くなってくれるのを祈るのみである。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。




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 レセプトオンラインの話に移る前に、まずこの国の現状を説明せねばならない。

 保険診療が行われた際、医療機関が患者負担額を控除した額を審査支払機関を通じて健康保険に請求し、その請求書はレセプトといい、医科点数表をもとにしていることは既に述べた。
 http://genshoku.blog69.fc2.com/blog-entry-5.html

 レセプトは紙でも電子媒体でも請求が可能である。
 カルテとレセプトは根本的に違うものであり、どんな小さな診療所でも、これらを全て手管理と言うことはまずない。
 大抵はカルテからレセプトを作成するためのコンピューター(レセコン)を用いているものである。
 ところが、レセプトを電子媒体で提出している診療所はほとんど無い。電子レセプトを採用しているのは、大病院(約25%)か保険調剤薬局(約60%)ぐらいのものである。 
 
 さて、レセプトが審査支払機関に提出されると、そこでまず一次審査が行われる。
 これは請求内容が保険診療として相応しいかどうかをチェックするわけであるが、そのチェックは人の眼による目視である。
 たとえ電子レセでも、紙のかわりにオンライン画面をみるだけであって、機械的にデータに対するロジカルチェックを行うわけではない。
 だからチェックの甘い辛いが発生するし、漏れも出る。

 一次審査を通過すると、とりあえず保険診療が認められる。
 すなわち、審査支払機関から医療機関に診療報酬が支払われ、その代金は保険者に請求することになる。そして請求書たるレセプトが保険者に送られることになる。
 
 ここで保険者に送られるレセプトは、原則、紙である。だから病院から電子レセプトで請求があっても、わざわざ紙に印刷しているわけである。
 数年前から電子データによる保険者送付も可能となったが、キー項目に画像データを紐付けただけという、データベースとしてはどうにもならないシロモノである。

 さて、保険者は原則紙ベースでレセプトを受け取り、審査支払機関では行わないチェックを行う。すなわち、入院前後の数ヶ月を串刺しする縦覧点検と、院外処方箋を出した病院のレセプトと保険調剤薬局のレセプトを突合してチェックを行う調剤突合点検がメインとなる。点検の結果、問題がありそうなものについては、審査支払機関に再審査申出を行うことになる。
 保険者における縦覧点検と調剤突合点検は、いずれも連名簿というレセプト一覧表を参考にして、手作業で対象レセプトを捜索、抽出し、目視で点検するというとてもアナログなやり方である。非効率なのは言うまでも無い。
 (なお医薬分業の理念自体は別のところにあり、保険診療のチェックを行いにくくすることが主目的ではない。また個人的に縦覧点検の効果には疑問があるが、それは蛇足である)
 ちなみに連名簿自体は電子化されており、データベース足りうるが、レセプトの具体的な中身までは入っていない。

 つまり、病院、審査支払機関、保険者、それぞれが各々の仕事のために電算化を実現しているが、データベースやコードにおいて互換はなく、ときに電子→紙→電子といった非常に非効率な情報伝達の方法を取っている。

 要するに、日本の医療保険請求の電子化状況は、このようなていたらくである。

 なぜこのような状況かと言えば、三師会の圧力が大きい。
 三師会とは医師会、歯科医師会、薬剤師会のことである。2年前の中協医汚職事件が記憶に新しいが、政界や中央省庁とただならぬ繋がりがあるのは言うまでも無い。
 日本で医療保険請求の電子化に、ことあるごとに歯止めを掛けてきたのはこれら三師会なのであり、前述の「保険者への電子レセ送付」を骨抜きにしてしまったのも例に漏れず医師会等の圧力によるものである。
 反対の理由としては「医師各個人の裁量の自由を奪い、画一的な基準によって云々かんぬん」といった内容だったと思う。
 しかし、実際のところ保険者による査定の大半は傷病名漏れなどの要するに「記載不備」や、この項目とこの項目は同時に請求できないといった「請求内容の不備」であり、診療内容まで切り込んでザックリやるというのは余りお目にかかったことが無い。
 もっともらしい理由をかかげてはいるが、要するに「彼ら」にとって保険者や審査支払機関のチェックがやりにくい方が都合が良いのだ。
 どうにも筋が通らないことである。

 あいにく、マスコミは公務員叩きにばかり執着して、このような部分には触れてくれない。非常に残念である。

** 追記 **

 6月25日、記事を一部修正しました(保険者における点検)。
 7月6日、カテゴリーを修正しました。




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