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 さて、問題なのは4である。
 税担当課が本人等から取得した所得情報は、課税のためのものであり、地方税法のどこにも後期高齢者医療のために利用や提供を行ってよいとは書いてない。
 即ち目的外提供ということである。
 そして適用除外の基準となる生活保護の情報も、おそらくこれと同じ扱いになるのではないかと思われる。

 厚生労働省はこの目的外提供の根拠として高齢者医療確保法の以下の条文をあげている。

 第百三十八条 後期高齢者医療広域連合は、被保険者の資格、後期高齢者医療給付及び保険料に関して必要があると認めるときは、被保険者、被保険者の配偶者若しくは被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者の資産若しくは収入の状況又は被保険者に対する第百七条第二項に規定する老齢等年金給付の支給状況につき、市町村その他の官公署若しくは年金保険者に対し必要な文書の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社その他の機関若しくは被保険者の雇用主その他の関係人に報告を求めることができる。
 2 後期高齢者医療広域連合は、被保険者の資格に関し必要があると認めるときは、他の後期高齢者医療広域連合及び保険者に対し、他の後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者及び加入者の氏名及び住所、健康保険法第三条第三項に規定する適用事業所の名称及び所在地その他の必要な資料の提供を求めることができる。
 3 市町村は、保険料の徴収に関して必要があると認めるときは、被保険者、被保険者の配偶者若しくは被保険者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者の資産若しくは収入の状況又は被保険者に対する第百七条第二項に規定する老齢等年金給付の支給状況につき、官公署若しくは年金保険者に対し必要な文書の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社その他の機関若しくは被保険者の雇用主その他の関係人に報告を求めることができる。

 この条文は「広域連合が市町村税担当課に依頼することができる」というだけであって、「市町村税担当課が広域連合の依頼に従わなければならない」ということではない。
 またたとえ依頼を受けてくれるとしても、条文には「文書の閲覧若しくは資料の提供」としか定められておらず、「月次(あるいは年次)の電子データの送信」とはどこにも書いていない。
 「所得状況を紙文書で回答してやるから紙文書で依頼文を出せ」と言われてしまえばそれまでだ。
 「資料の提供」が「月次(あるいは年次)の定例的な電子データの送信」というのは明らかに拡大解釈で、根拠条文としては甚だ弱いといわざるを得ない。
 ここがポリシー調整で最大の泣き所、担当者が一番頭が痛い部分であろう。

 なお、現在でも新共電等で国保連合会に老人保健の所得にかかる情報を提供している部分があるが、これは所得を元に市町村で判定した結果を提供しているわけであり、ナマの税額を通知しているわけではない。
 ここに限っては「今までどおり」という言い訳は通用しない。

 では、5はどうであろうか?
 一般に市町村の個人情報保護条例で禁忌とされる「電子計算機結合」は、外部から市町村の個人情報等のDBにアクセスでき、参照や更新が行える状態を指す。
 標準システムは確かに市町村と広域連合がLGWAN等のネットワークで接続され、双方向のデータ授受を行うため、「電子計算機結合」に該当しそうに見える。
 しかし実際にはLASDECの定めるLGWANのFW設定でもデータの授受ができるよう、市町村から広域連合へのデータ転送は市町村側からの送信(PUSH)、広域連合から市町村へのデータ転送は市町村側からの送信要求(PULL)によって行われる。
 要するに、広域連合側からは勝手に市町村の窓口サーバにアクセスすることはできず、「電子計算機結合」には該当しないということである。

 なおオンライン接続については、総務省が「地方公共団体における個人情報保護対策について」(平成15年6月16日総行情第91号各都道府県知事・各指定都市市長あて総務省政策統括官通知)で以下のように言及している。

 従来の個人情報保護条例の中には、地方公共団体の電子計算機システムを通信回線によって外部の機関と結合すること、通信回線を通じて外部へ個人情報を提供すること等を一律に禁止しているものが見受けられるところである。しかしながら、ネットワークを活用した情報処理がIT社会の実現に向けて不可欠であることに鑑み、一律に禁止をするのではなく、提供の目的、利用形態や権利利益の侵害のおそれ、受領者側における保護措置の状況等を個別に検討した上で提供の可否を決定すべきである。
 このことから個人情報保護条例において一律にオンライン結合を禁止している場合には、早急な規定の見直しが必要である。

 6については、単なる委託であれば全く問題ない。
 個人情報の保護に関する法律では、単なる委託は第三者提供にはあたらず本人の同意は必要ない(第二十三条第四項)が、委託先でちゃんと適切に取り扱いされるように監督せよ(第二十二条)とある。
 市町村の個人情報保護条例でも同様である。
 ところが、情報提供先での委託となれば、話は少々厄介だ。
 この結論についてはとりあえず保留しておこう。

 最後の7であるが、
 法律というのは施行されてはじめて効力を持つ。
 制度の根幹たる高齢者医療確保法の施行は、平成20年4月1日である。
 ところが、実際には平成19年の9月ごろから広域連合に各種情報を提供することになっており、この時点で効力を持たない法律を根拠とした個人情報の提供は果たして妥当か?
 言い換えれば、平成20年4月以後しか情報の提供が出来ないのではないか?という疑問である。

 これに対する解決策であるが、こういう考え方はどうであろうか。
 確かに施行はされてないが、平成19年9月の時点で公布はされている。
 公布はされているから、平成20年4月以降の制度の準備に情報を利用するということは対象者が認識できるはずである…
 要は利用目的が明示されていることが重要であり、施行前うんぬんというのは重箱の隅の話であろう。

 ひととおり見渡してみると、どうやら根が深そうな問題は1、4、6のあたりの目的外提供や二次利用の妥当性ということになりそうだ。

(続く)

** 追記 **

12月27日 税情報の提供につき、「日次」と誤記していたものを「月次(あるいは年次)」と改めました。

12月30日 7の根拠につき「健康保険法等の一部を改正する法律」の附則の以下の条文が該当するのではないか、との情報提供をいただきました。uknaviさんありがとうございます。(ただしここに規定されているのは都道府県と市町村のみであり、広域連合本体については含まれません)

第三十五条 都道府県及び市町村は、第七条の規定の施行の日前においても、後期高齢者医療の事務の実施に必要な準備行為をすることができる。


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 後期高齢者医療制度の資格事務担当だったはずがひょんなことで電算担当に。

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