この制度を立て直すため、「医療制度改革大綱」に基づく医療制度関連法案「健康保険法等の一部を改正する法律」が第164回通常国会で可決され、平成18年6月21日に公布された。
この中では、国民皆保険制度を堅持し、将来にわたり持続可能なものとしていくため、超高齢社会を展望した新たな医療制度体系として、平成20年度から「後期高齢者医療制度」を実施することが定められている。
その運営主体は都道府県でも市町村でもなく「広域連合」である。
この新たな「後期高齢者医療広域連合」は、都道府県単位の全市町村が加入し、平成18年度末日までに設立されなければならないのだ。
では「広域連合」とは一体、何ぞやということだが、
広域連合制度は、平成6年の地方自治法改正により創設された制度である。
地方自治体は、個別に行うよりは、広域的かつ総合的に処理をすることがより適当な事務について、広域連合という新たな地方公共団体を設立し、その事務を委任することができる。
この構成団体は、都道府県、市町村及び特別区であり、その組合わせには制限はない。
既に介護保険関連で、全国にいくつもの広域連合が設立され、事務を行っているところである。
(なお、このblogの他の記事において「広域連合」という場合、特に断りのない限り「後期高齢者医療広域連合」をさすものとする。)
広域連合において事務を行う大きなメリットは2つある。
1つは、運営財源が主として構成団体の負担金により賄われること。
これにより、安定した財政基盤を確保することができ、また(財政要因をボトルネックとした)広域内の自治体間のサービスの格差や不公平を解消することができる。
もう1つは自ら策定した広域計画に支障となる地方自治体がある場合、その自治体に対して勧告を行うことができることである。事務処理に基づく不均衡や不公平もこれにより解消が可能だ。
こうした面から、広域連合の設立により、総合的、計画的に事務処理を進めることが可能となるわけである。
ところが、良いことばかりでもない。
市町村には保険料徴収事務を中心とした窓口事務が残り、かつ広域連合運営のための人員や資金も負担せねばならないため、「財政は苦しくなるし、仕事は楽にならない」という市町村サイドの割損感が強い。
また広域連合の事務を、電算システムごと審査支払機関たる国保連合会に委託するプランも打ち出されており、広域計画も上手く機能しなければ、実体のない単なる天下り機関になるという危惧もある。
なお、広域連合は地方公共団体であるため、その構成団体の住民は、事務、長その他の執行機関の権限に属する事務の執行に関する監査や、議会の解散、職員の解職等について直接請求を行うことが可能である。