ソフトウェア開発などにおけるコスト管理(工数積算)の技法の中で、最もポピュラーで、最も一般に用いられている手法なのだが、
何のことはない、
「K:経験」と「K:カン」と「D:度胸」でエイヤ!と見積もる手法である。
(なお、コスト管理ではなくプロジェクトマネジメントに用いる場合は、「K:根性」「K:根性」「D:ド根性!」になったり、「K:火事場の」「K:クソ」「D:力」になるとか…)
このKKD法、致命的な欠点があって、90%以上の高確率で外れるということだ。
こう書くと、「何だ!このいい加減なのは!」と怒られそうだが、
地方自治体の開発現場ではこれがないと回らない。
それもそのはず、
地方自治体は、中央省庁がまだろくに資料(仕様ではない、資料である)すら出してこない状況で予算要求や契約を行わなければならないわけで、
まともな要求定義や工数積算など出来るはずがない。
ましてや、本稼動初日から制度名称が変わるという大仕様変更を皮切りとして、
1年に2度も3度も卒倒するような大仕様変更が発生するリスクを織り込めるはずもないのだ。
土台、無理なのである。
無理なのだが、地方の役人はとにかくそれらしい資料を作成して議会を納得させ、必要と思われる相当の予算を分捕らなければならない。
重要なのは、発注側と受注側が、双方、その積算内容に納得していることである。
受注側は想定できるリスクを織り込み、発注側にはその結果に対して財政当局や議会を納得させるだけの理由が無ければならない。
結果も重要だが、まずその「合意」がなければ何も進まない。
医療制度も全く同じである。
どの制度が一番良くて、どの世代からも支持を得られるか、など分かるはずもない。
重要なのは、なぜこうなるかということをとことん国民に説明し、支持までは行かなくとも十分に説得力のある制度に仕上げることであろう。
後期高齢者医療は結局のところ、ここのプロセスが軽視されていた。
「10年議論した」「パブリックコメントも募った」とは言えど、
その中身は厚生労働省のTOPから4クリックも5クリックもしなければたどり着けないところにあり、
パブコメにいたっては、GoogleやYahooのクローラーがやってきたときにはもう募集期間が過ぎているという始末。
現場の地方役人は罵声を浴びながらも「将来の、貴方達のお孫さんの世代のためにも、この制度が必要なんです!」と真摯に説明してきたが、
それも制度開始直後からころころ改変され、説得力のかけらも無くなった。
今後、政権与党となる民主党のマニュフェストには以下の一文がある。
21.後期高齢者医療制度を廃止し、国民皆保険を守る
【政策目的】
○年齢で差別する制度を廃止して、医療制度に対する国民の信頼を高める。
○医療保険制度の一元的運用を通じて、国民皆保険制度を守る。
【具体策】
○後期高齢者医療制度・関連法は廃止する。廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する。
○被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る。
【所要額】
8500億円程度
方向性の是非や優劣はここで語るべき内容ではないが、調整に難航しそうであることは容易に想像が付く。
願わくは、少なくとも2年以上かけてじっくり議論し、国民にその結果を浸透させてほしい。
勝手ながら、SNS内で投稿された、現場担当者のナマの声をいくつか紹介させていただこう。
「確固たる政権を構築して欲しい。別に特定政党に肩入れしているわけじゃなく、政策がブレたら余計な金がかかるから」
「『単に借金だけが増えた!』ということにだけはならないでほしい」
「8500億?最低でも1兆は必要だろ。しかも、抜本的改革が完了するまで毎年公費投入、本当にできるのかね?」
「8月にさかのぼって、一部負担割合を全員1割にするとか、保険料で10割軽減をつくるとか、やりそうだな。とりあえず国民の目に見える結果が欲しいだろうし」
「どうせ名前変更するだけだろ」
自分はもう部外者であるから、前の記事にも書いたとおり生暖かく見守るだけだが、
ともあれ、「K:後期高齢」「K:変えてみたけど」「D:ダメでした」とはならないようにしてもらいたいものだ。
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2013/04/15 | | EDIT