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仕事に出かけようとした矢先、怪獣2号の様子がおかしいと女房殿から連絡が入った。
「熱が38℃以上あるよ」
「3か月の赤ん坊だから熱ぐらい出すだろ」
「吐いたよ」
「3か月の赤ん坊だから体調悪いときには吐くだろ」
「2時間ぐらいに4回吐いてて、3回目以降は胃液なんだけど」
「ふむ…」
ネットで調べたところ、「乳児で頻回の嘔吐や胃液を吐くような嘔吐がある場合はすぐに医療機関に受診せよ」との記述がある。
どの程度の緊急性か判断が付かないが、とりあえず付近の総合病院救急外来に連れて行くことにした。
が、
6時間待ちでしかも小児科の当直はいないとのこと。
「小児科医がいないなら受診しても余り意味無いな」と、別の休日診療所に連絡をとるも、やはり当直の小児科医はいない。
「小児科医を探しているなら都道府県の救急医療情報システムをあたってみては」と休日診療所で言われたので、
言われたとおりに電話をかけてみたが、何十回かけても話し中でつながらない。
なるほど、これが医療崩壊というやつか。
「電話が混みあっていますので、そのままお待ちください」のアナウンスの代わりに音声広告でも流せば税収の足しになるな、と不謹慎なことを考える余裕があるあたり父親として失格なのかもしれないが、
ともあれ、打つ手が無くなった。
一応、広域内で一番大きな市であるが、こんな有様である。
奈良大淀病院の一件以来、とかく医療崩壊という言葉が引き合いに出されるが、
別に日本国民が病気になりやすくなったわけではないし、医者の総数が劇的に減ったわけではない。
変わったのは、医療行政と国民の医療に関する考え方である。
とりわけ縮小傾向の老人医療に比べ、近年の各自治体の乳児や子供への医療助成の充実は目を見張るものがある。
実はこうした福祉医療施策自体が医療を崩壊させているのではなかろうか。
特に問題なのは、乳幼児の医療費を無料にするという制度だ。
実際のところ、救急外来の6時間待ちに並ぶ、あるいは救急車を利用する小児患者のどれだけが、本当に命に関わるものなのだろう。
自分が子供だった三十年前は、土日や夜間は医者がいないのが当たり前。そういうときに重い病気になれば、民間療法等でしのぎ、次の平日に医者に見てもらうのが普通であった。
それで誰も不満を言うものはいなかったし、少なくとも自分の周囲で(交通事故や水難で死んだ同級生はいたが)土日に病院にかかれなかったために子供が死んだという話は聞かなかった。
今や、夜間診療の選定療養の自己負担に対し、乳児医療が使えないことを抗議する親が大勢いる時代である。
福祉施策は良かれ悪しかれ人の意識を大きく変えてしまう。
三つ子の魂百までというが、幼い頃「無料だから」と、取るにならない病気でも救急外来に押しかけていた子供は、その行為を当然のものとして育っていき、医療資源はますます枯渇するだろう。
乳児や子供の死亡率は年々低くなっているが、それは明らかに医学の進歩によるものであり、福祉医療による早期治療の寄与は微々たるものだ。
医療費を無料にするのが少子化対策というトンデモ論はどこから出てきたか分からないが、少なくとも「医療費が無料だからもう1人」と考える人はいない。
そうした類の話をするならば、産科医療や妊産婦健診を保険診療にする方が「様々な面」で有益である。
思うに乳児医療なんぞ、入院のみで良い。外来もせいぜい3歳までだ。
本当の意味で「福祉医療」を充実させたいのであれば、必要な患者に必要なだけ、適切に医療資源が配分されるような仕組み(例えば、トリアージ的なもの)を考えるべきではなかろうか。
夜間救急がコンビニ化しているのは、核家族化や少子化で子供を看病するシーンが減り、どの程度であれば医療機関に受診させるべきかが分からない親(自分もその1人となろうが)が増えていることも一因である。医師法との兼ね合いが難しいが、「救急度」を判断できる情報を幅広く提供することが今後必要になるだろう。
ただ単に金をばら撒く年齢層を増やしていくのは思考停止もいいところ。愚策中の愚策である。
腹が立つのはこうした愚策を自分の市が行っており、それを推し進める議員に(以下自粛)
で、冒頭の怪獣2号がその後どうなったかという話であるが、
小康状態になったため、「救急車を」という親族を押しとどめ、結局医者にはかからなかった。
翌日、かかりつけの小児科に受診したら、便秘と診断され、綿棒浣腸で完治した。
そんなものである。
※ ウェブログポリシーにも記載しているが、記事の内容は一国民、一市民としての筆者の私的な意見であり、公人としての見解を示すものではないので悪しからず。









COMMENTS
ijikacho
#-
2008/03/04 | URL | EDIT
医療崩壊の原因(特に小児科)はまさに現職公務員SEさんのおっしゃる通り、乳幼児の医療費を無料にする制度にあると思います。
市町村によっては中学生まで無料といったところまであるに至っては、呆れるばかりです。
その結果、混んでる昼間に行くよりは、夜間や休日に行った方が待ち時間が少なくて早く診てくれるって思う母親が非常に多くなってきていると思います。
「県立柏原病院の小児科を守る会」のような良識ある親になって頂きたいと思うとともに、乳幼児医療制度の年齢縮小(2or3歳くらいまで)を是非、実現して欲しいと切に思います。
医療崩壊の原因は市町村の医療行政の(お金さえ出せばいい的な)無策が一端を担っているのではないでしょうか?
現職公務員SE
#1tpQKjho
2008/03/06 | URL | EDIT
>医療崩壊の原因(特に小児科)はまさに現職公務員SEさんのおっしゃる通り、
>乳幼児の医療費を無料にする制度にあると思います。
>医療崩壊の原因は市町村の医療行政の(お金さえ出せばいい的な)無策が一端を担っているのではないでしょうか?
やはりそうですか…。
>乳幼児医療制度の年齢縮小(2or3歳くらいまで)を是非、実現して欲しいと切に思います。
私人としての自分は同感です。
ただ、これを内部から実現するとなると相当難しいですね。
自分のところも含め、多くの自治体で首長や議員が「財政的に余裕があるなら年齢拡大することはいいことだ」という考えを持っています。
全国の行政担当者がどれだけこのことに気づいているかは分かりませんが、
たとえ気づいていても絶対に触れられないこと。まさにタブーの部分です。
何ともやりきれない気分ですが、
まずは医療崩壊の原因がどこにあるのかを有権者の方々に広く知っていただくことが重要だと思います。
絵描き人・植田
#-
2008/03/06 | URL | EDIT
「子供に対する過保護は虐待である」、という
ある精神科医の言葉を思い出しました。
現職公務員SE
#1tpQKjho
2008/03/09 | URL | EDIT
>「子供に対する過保護は虐待である」、という
>ある精神科医の言葉を思い出しました。
なるほど。
確かに教育面の影響もあるかも知れないですね。
PedsWorkHard
#aOQseIdA
2008/04/18 | URL | EDIT
公務員の中に医療費無料政策の愚がわかる人がいて嬉しく思います。応急診療所で仕事をしていると、熱が出てすぐ飛んでくる(もちろん緊急性はない)人ならまだマシな方で、ひどいと数日前から調子が悪くて夜受診とか、昼間受診して熱が下がらないからその夜受診とかがほとんどです。はっきり言って、タダだからこそできる行動です。
この無料政策は小児医療に対する価値や信頼、そして自らの命を削って働く小児科医のモチベーションを下げさせます。結果、待ち時間が長いとか望んだ検査がされなかった等、自分の思うように行かないことがあると、すぐモンスターペイシェントに変貌します。そして小児科医は救急現場から逃避し、若い医者は小児科医を目指さなくなっていきます。
公務員さんは予防医学や健康診断に懐疑的のようですが、成人・老人領域とは異なって、小児医療の領域では非常に重要なツールです。医療費無料政策を捨て、その分の費用を水痘・おたふく・インフルエンザ桿菌・肺炎球菌などのワクチン事業へもっとつぎ込むべきと思います。
個人的には予防医学がしっかりされていれば、無料措置は白血病や心臓病などの難病だけでもよいのではないかと思っています。
現職公務員SE
#1tpQKjho
2008/04/19 | URL | EDIT
コメントありがとうございます。
後期高齢者医療についてもそうなんですが、
「国民や住民の代表」が決めたことについては、
その中身の良し悪しに関わらず、粛々とそれを行わなければならないのが辛いところですね。
予防医学についてのご教授ありがとうございます。
いろいろ自分でも調べてみたいと思います。
PedsWorkHard
#aOQseIdA
2008/04/19 | URL | EDIT
この少子化が叫ばれる世の中で「乳幼児医療無料政策の撤退」を口にできる政治家はいないでしょう。というより、医療・福祉の領域における正しい政策というものが、国レベルでも地方自治体レベルでも非常にわかりにくいため、どうしても政治家は聞こえの良い表面的な政策になってしまうのでしょうね。
ただ、万が一医療費無料政策の撤退を実施できれば、多少は今の状況が改善するかとは思いますが、その間に本当に厳しい医療の現場で働ける小児科医(産科医も)がいなくなってしまっているでしょうから、もう破綻は避けられないと思います。なぜなら、今の研修体制や若い医者の行動を見ていると、現場の改善と待遇の改善が(しかも生半可なものではない)ない限り、小児科や産科を目指さないでしょう。さらには万が一劇的な待遇改善を実行できて多くの医者が小児科や産科を目指すようになっても、医者が一人前になるには10年はかかります(今のぬるい研修体制ではまともな医者にはならないかも知れませんし、まして指導医がいません)ので、破綻はもはや避けられないと思います。
PS:ちなみに生後3ヶ月で熱がでたら、救急外来の、しかも小児科医への受診は致し方ない面もあると思います。結果オーライですが、何もなくて良かったですね。