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 「療養病床」というのは余り聞きなれない言葉かもしれないが、最近は医療制度改革関係の報道で耳にする機会が多いのではなかろうか。
 医療制度改革に盛り込まれているのは、以下の2点である。

 ・療養病床の食費と居住費の見直し
 ・介護型療養病床の廃止


 では、療養病床とは一体全体なんぞや、ということだが、マスコミの報道などではただ漠然と長期入院と表現されていることが多いと思う。
 簡単に説明すると、厚生労働省が定めた病床区分の1つであり、その狙いはズバリ医療費の削減である。病院のベッドに「療養病床」をはじめとした区分を設け、病院の機能分化を促進し、社会的入院を解消して、結果として全体の医療費を圧縮する、というのが目的といえる。
 題目だけ見るとすばらしいが、実際の医療の現場では、様々な歪みや問題を生ずる原因ともなっている。それはおいおい説明して行こうと思う。

 「療養病床」の歴史は比較的新しい。平成4年の医療法改正で入院病床に一般病床と区別して「療養型病床群」というものができたが、これが元である。
 病床区分は平成13年3月第4次医療法改正の結果、「精神」「結核」「感染症」「一般」「療養」の5つの区分にわかれ、そして療養病床については、平成12年4月の介護保険法施行の結果、従来からの医療保険型と、介護保険型の、2種類に分かれることになった。
 とりあえず、「一般病床」と「医療型療養病床」の2つに絞って話を進めていくことにする。

 「一般」と「療養」の違いを簡単に説明すると、「一般」が急性期(注1)、「療養」が慢性期(注2)の治療に使用するべきベッドということになる。
 さて、医療費の無駄を語るうえで、常にやり玉に挙げられるのは「社会的入院」である。
 一番望ましくない状態は、緊急の治療の必要の無い患者が、家族が面倒を見ることができないという事情で、いつまでも退院せずにベッドを占領し、そのため本当に治療が必要な方が即座に入院できず、また結果として医療費自体もかさんでしまう、こういう状態である。
 簡単に言えば、「社会的入院」とは、介護を必要とするけど医療はあまり必要としない患者が医療のベッドを占有し続けること。ということになる。
 そういった患者は介護入所施設や在宅で面倒を見てもらうのが一番望ましいが、老人が入院し治療を受けて、峠を越して容態が安定したら、即「介護へ移ってください」というのも無茶な話である。
 その猶予期間的な意味合いで、一般病床と介護保険との間に療養病床が設けられていると言える。

 さて、「療養病床」を語る上で、診療報酬の問題は避けて通れない。
 医療機関は健康保険に基づく医療を患者に提供した場合、保険証の内容とカルテの内容から、診療報酬明細書(俗にレセプトと呼ばれる)を提出し、医療費の7割(老人は8割から9割)を健康保険の保険者に請求することになる。
 もちろん、どういう治療を行ったら幾ら請求できるか、というのは決まりがある。
 いわゆる「医科点数表」というものであるが、正式には「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」、老人のほうは「老人保健法の規定による医療に要する費用の額の算定に関する基準」という長ったらしい名前の告示である。法律でも政令でもない単なる告示なのであるが、これのおかげで医療機関や自治体が散々振り回され、これがために医師会という圧力団体が存在し、またこの暗号のような内容を読み解くための「医療事務」という資格があるわけで、なかなか一筋縄ではいかない、厄介な存在である。

 患者を入院させた際の医療機関の診療報酬は、入院基本料という名のベースの定額部分と、それ以外の検査、処置、投薬などの出来高部分に分かれる。
 入院基本料は基本料といいつつも、その算出方法は非常に複雑である。一般・療養といった病床の区分、看護師の量や平均在院日数や正看護師の比率などによって決まる施設のランク(施設基準)、更には入院日数も考慮して決められることになる。

 なお、今年4月の診療報酬改定で看護師に関する基準が極めて厳しくなり、看護師の引き抜き合戦が起こったり、廃業に追い込まれる病院が続出しているのはあまり知られていない。看護師の転職が多くなり、ベテランやリーダーが育たないというのも悪影響も懸念される。
 この話題については別の機会に話そうと思う。

 さて、診療報酬点数そのものをあげると煩雑になるため、概略的な話で済まそうと思う。

 まず入院基本料は、看護師が患者何人に対し1人か、ということで、7対1、10対1、13対1、15対1、それ以下の5ランクに分かれている。
 病院が7対1などの上位ランクを得るためには、看護師の人数に加え、正看護師の比率や入院日数等、厳しい条件をクリアせねばならない。
 いわば病院の格付けがされているわけである。厳しい基準を満たして優秀な医療機関と認められれば、リターンも大きくなるという仕組みなのだ。
 これに加え、入院日数も影響する。入院初期の、手厚い治療が必要な時期にはボーナスが加えられる。逆に180日を超えると病院と患者、両方にペナルティがある。
 つまり、病院にとっては、患者を集中的に治療してすぐに退院させ、空いたベッドに別の患者を受け入れる、つまりベッドの回転率を上げる手法が最も診療報酬が高くなり、また病院のランクも上がって良いこと尽くめという構図が見えてくる。

 一方で、療養病床の方はだいぶ毛色が違う。今年7月から改定される施設基準によれば、患者に提供する医療の内容と患者のADL支援レベル(注3)により、5段階(特別も含め6段階?)となる。
 合計平均在院日数や入院日数での縛りはない。一般と療養で一番高い入院基本料同士で比較すると、療養の方が高い。
 入院日数などの縛りもないため、随分お得な感じがするが、療養病床の最高ランクは急性期に匹敵する24時間体制の管理を必要とする状態で、今まで比較的医療の必要性が低い療養病床でこのような体制がとれるとは考えづらい。
 つまり、大半は一般より安くなると予想できる。
 更に、療養病床の診療報酬点数は包括である。包括とは何かというと、特別なものを除き、検査、処置、投薬などの普通は出来高の部分が含まれており、追加報酬として認められないということだ。
 DPC(注4)然り、今や包括が流行であるが、乱暴な言い方をすれば、患者に手厚い医療を提供しても儲からない、検査や処置をしてもしなくても同じということである。
 誤解を恐れず言えば、良心的な病院ほど馬鹿を見る構図とも言える。
 こうした事情から、療養病床の診療報酬は潜在的な問題をいくつか抱えていることになる。
(続く)

****
 なお、この情報は平成18年6月初旬の情報に基づく。
 平成18年7月1日からの施設基準についての告示が6月16日に出た(らしい)が、その内容は反映させていない。
 しかし、全国の医療機関に2週間程度で体制を変えろというのは、相変わらず厚生労働省は現場を無視しているのが良く分かる。

注1 一般には病気の発症直後や、症状の変化が激しい時期のことで、容態が安定するまでの集中的な治療が必要な時期を言う。
注2 急性期を脱した状態。症状はあるものの、集中的な治療は必要ない(あるいは役に立たない)
注3 日常生活動作にどれだけの支援が必要かを表す目安。今回の療養病床については、「ベッド上可動性」「移乗」「食事」「トイレ」の4項目からなる。
注4 Diagnosis Procedure Combinationの略。病気と病状を基に定めたれた包括部分と出来高部分を組み合わせた算定方式。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。




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 後期高齢者医療制度の資格事務担当だったはずがひょんなことで電算担当に。

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