公務員叩きに物申す!−現職公務員の妄言 システム運用保守に、後期高齢者医療制度に、公務員叩き批判に、行政改革に、福祉行政に、ITに、WEB2.0に、SNS管理に、VBに、Scriptに、情報セキュリティに、IPネットワークに、SEOに、ほんの少し家族サービスなブログ。

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 長々と続けてきた医療制度改革の話であるが、最後に原点にたちかえって考えてみたい。

 そもそもなぜ、医療制度改革が行われなければならなかったのだろうか?
 それは国民医療費が増大し、保険財政を圧迫しているからである。医療費が増大したのは、国民が不健康になったとか、薬の無駄遣いが増えたとかいうことではなく、そもそも医療費が多くかかる老人の割合が相対的に増えてきたからだ。

 老人は若年者の5倍の医療費がかかる。
 たった1割の老人が国民医療費の1/3を使ってしまっている。

 
 この政府のプロパガンダの内容に誤りはない。
 だから医療費を抑制しようということである。

 今回の医療制度改革でも「限られた財源の中で、将来とも良質な医療を確保し、持続可能な皆保険制度とするために」高所得や療養病床の老人の負担を引き上げたわけだが、給付の見直し等の短期的施策による効果はたかだが知れている。

 改革の本丸は医療費自体の削減にあり、2015年までの削減予定の2.6兆円のうち、約2兆円に相当する。
 http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/10/tp1019-1b.html
 具体的には予防の強化、すなわち生活習慣病対策であり、健康診断による保健指導が実現のための手段である。

 残念ながら健康診断は万能ではない。
 むしろ、項目の大半が役に立たないものであるという結果が昨年報道された。
 http://inoue0.exblog.jp/1553578
 現状、国はこれに約1兆円投入している。
 眉唾の健康診断で更に2兆円削減とは、錬金術のような話である。

 連載の冒頭にも書いたが、マスコミの記事や社説の多くは表面的、短期的な負担増しか述べず、この本丸部分の実現性に言及しているものは少数しか見当たらない。
 かくもマスコミは質が落ちたか、と嘆息せざるを得ない。
 公務員を叩いている暇があったら、もっと勉強していただき、皆のためになる記事を書いていただきたいと思う。

 さて、マスコミも触れないことを書くのが当blogの趣旨だとも思うので、更に切り込んで行きたい。

 そもそも予防は医療費削減効果があるのだろうか?
 病気の予防をすれば、なるほど、病院にかかる可能性は少なくなる。
 しかし、人は必ず死ぬ。
 病気の予防自体は意味があることであるが、医療費削減につながるかどうかは疑問だ。
 なぜならば死ぬときに医者にかからない者は稀であり、病気の予防は単にそれを先送りにしているだけだからである。

 そして、ここが重要な点であるが、医療費の大半は人が死ぬときに費やされる。
 町医者の待合室で四方山話をしている老人が、日本の医療費を食いつぶしていると思っている方が多いと思うが、それは大きな誤りだ。
 多少古いデータであるが、レセプトの金額の上位10%の患者が総医療費の6割、1%の患者が1/4を使っているという統計結果がある。
 そしてこれら高額レセプトの患者は大半が1か月以内に死亡しているのであり、社会復帰を果たしているものは皆無に近い。

 家族がドクターに「お願いします」と一声かけると、そこに莫大な税金が投入される。それによって、多少の延命が成功したのかもしれないが(これは実証しようが無い。なぜなら延命措置をしなかった場合と比較せねばならないからだ)、逆にいえばその金は他の多くの「これから生きていく人」への福祉に充当できるたかもしれないのである。
 命はかけがえがなく、金では買えない。
 しかし、感情論や精神論だけでは行政はなりたたない。
 少数の死にゆく命のために、どこまで我々は譲歩できるであろうか?

 我々は今までこの部分について議論を避けてきた。
 だが、タブーと言うのは体のいい言い訳だ。
 日本の公的医療制度がぐらついている今だからこそ、終末期の医療について明らかにし、国民全体が真剣に命の値段について議論するべきであると思う。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。
 7月8日、健康指導による医療費削減の実現性について、当初「マスコミ記事は一誌も無い」としていましたが、読売新聞ならびに日本経済新聞において言及されていることが判明しましたので、適切な表現に改めました。




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タグリスト: 医療制度改革, 終末期医療,
 診療報酬請求制度のIT化といって、まず真っ先に連想されるのはお隣の国、韓国である。 

 日本のレセプト電子化の状況は前回述べたが、病院と診療所と薬局でならすと約25%になる。ところが、韓国の電子化率は96%である。
 日本はレセプトの点検や審査を紙ベースの目視で行い、審査支払機関だけでは不十分であるから保険者からも再審査が行われることも述べた。ところが韓国では原則電算上のロジカルチェックしか行われず、目視で内容を精査するのは非常に例外的なケースである。審査支払機関でのチェック後に保険者が再審査を申し出することはない。

 当然人件費も大きく異なる。レセプトが同じ枚数だとすると、韓国における審査支払機関の職員数は、日本のわずか1/4である。審査委員の数は1/8である。なおかつ日本では保険者サイドでも人件費をかけて点検や管理を行っている。この点も考慮すれば、差は歴然である。

 もちろん電子化の効果はこれだけではない。
 全国民5年分、100TBとも言われるレセプトのデータウェアハウスを活用できる強みがある。
 
 実際、韓国に出来て、日本で出来ないことを列挙してみよう。

 ○疾病の流行状況の把握。
 ○患者単位での医薬品の併用禁忌チェック。
 ○不適正な医薬品や血液製剤発生時における、投与患者の検索、追跡調査、補償。
 ○レセプトデータの医学研究への活用。
 ○手術の成功率等、様々な側面からの医療の質評価。
 ○正確な特定傷病患者数の把握。


 この業界の人間であれば、一番最後の項目を見て「おや?」と思われたかもしれない。これについては後で詳述することにする。 

 さて、日本と韓国はどうしてこうも差がついてしまったのか?

 理由の1つとしてコード化がある。

 韓国は1991年にようやく国民皆保険が実現した。決して日本以上に歴史が古いわけではない。
 だが、紙ベースの時代から電子化をにらみ、徹底したコード化の対策に取り組んできたのである。

 日本で電子レセを推進するに当たり、大きな問題となっているのが、傷病名や各種点数表項目のコード化である。
 日本でも韓国でも、特定の診療行為を評価する際には、ベースとなる「基本点数」とボーナスである「加算部分」を組み合わせる方式である。
 例えば、「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」は「再診料」というベース部分に「乳幼児」であることの加算と「時間外」であることの加算が考慮される。
 これは日本でも韓国でも同じである。

 日本の点数表は、この基本点数と各種加算にそれぞれコードが振られている。つまりコードから求めた値を演算しないと「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」を求めることが出来ない。
 ところが、韓国の点数表では「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」というコードが存在する。演算は必要ない。
 電算処理を行ううえで、どちらが有利かは言うまでもないだろう。

 また日本の医療機関ではいわゆる「レセコン」は導入しているが、電子レセの普及は進まないことは以前に述べた。
 要するに、医療機関の立場からすれば、電子レセに切り替えるメリットが余り無いのである。(特に診療所)
  
 その点、韓国は徹底的な利益誘導を行った。

 まず、電子の場合は医療機関に診療報酬を早期に支払い、逆に紙請求の場合は支払を遅らせたのである。
 これは効果的だ。日本でも電子も場合はボーナスが付くが、反面患者負担額にも反映するという悪影響がある。
 当時の韓国での深刻な不況も追い風となった。
 加えて、電子レセに切り替えると、最高6か月間、レセプト審査が免除されるという思い切った施策も行った。
 導入当初だけでなく、1年間行政処分が無いと2年間審査免除というプログラムも併用している(ただし抜き打ち検査は行われる)。
 たとえ査定されても、その理由や内容が細かく書いてあり、病院側が再発防止にフィードバックさせやすいということも好印象となった。
 かくして韓国のレセプト電子化はあっという間に浸透したわけである。
 
 もう1つの深刻な問題として、いわゆる「保険適応病名」問題がある。
 
 業界人であれば周知の事実であるが、日本では「保険病名」あるいは「適応病名」と呼ばれる、保険請求専用のウソ病名がある。
 ある診療行為が患者にとって明らかに必要だとしても、保険として認められないことがある。だからウソ病名を付けてしまえという発想である。
 例えば長く使うと肝臓に負担がかかり、投与中は定期的に肝機能検査を受けなければならないという薬がある。もちろん検査にも相応のコストがかかる。薬のために検査をし、その分持ち出しでは採算が取れない。
 「だったら肝臓の病気にして保険診療として認められるようにしてしまえ」ということなのである。
 もし「強い薬で胃を痛めるから」と併せて胃薬が処方された場合、貴方は胃潰瘍にされているかもしれない。ということだ。
 自分は保険者サイドの人間であるが、この世界に入って長いし、友人に腹を割って話せる医者も数多くいる。両方の内情は理解しているつもりだ。
 誤解を恐れずに言えば、医療機関の診療報酬請求は不正ギリギリのグレーゾーンの領域で行われている。そうしなければならないのは、つまり制度が悪いのである。

 医療機関は請求に不備が無いように、本当の病名によるレセプトを作成したあとで、適用病名を継ぎ足す作業を行う。そして保険者は適用病名もれをくまなくチェックし、バッサリ切りにかかる…。

 こんなナンセンスなことに病院と保険者はしのぎを削っているのである。しかも国保などであれば人件費はつまり税金だ。皆も無縁の問題ではない。
 どちらがが悪い、どちらに責任があるということではなく、こうした(少なくともレセプト電子化という面から見れば)悪しき慣習は無くしていかねばならないと思うのである。

 脱線が過ぎた。こうした話は別の機会を設けてゆっくり書こうと思う。

 本題に戻るが、こんな状態では、せっかく電子化が成されても、データの信用性が低く、使い物にならないのは言うまでもない。
 「胃潰瘍」で検索したら、その中に「なんちゃって胃潰瘍」が数多く混入しているのだから。
 ちなみに韓国ではこうした「保険病名」問題は無いそうであり、質の高い医療情報を確保することが可能なのだそうである。

 さて、こうした問題以外にも、解決せねばならないことは山積みだ。
 もし「レセプトオンライン」という夢のような話を実現するためには住基ネットと同等またはそれ以上のセキュリティを確保せねばならないし、導入費用や基盤整備の問題もある。

 5年間で完全実施できるかどうかはいささか疑問だ。
 ともあれ、現実的な問題として、毎月運ばなければならない多量の紙の山が早く無くなってくれるのを祈るのみである。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。




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タグリスト: レセプト, IT化, 医療制度改革,
 レセプトオンラインの話に移る前に、まずこの国の現状を説明せねばならない。

 保険診療が行われた際、医療機関が患者負担額を控除した額を審査支払機関を通じて健康保険に請求し、その請求書はレセプトといい、医科点数表をもとにしていることは既に述べた。
 http://genshoku.blog69.fc2.com/blog-entry-5.html

 レセプトは紙でも電子媒体でも請求が可能である。
 カルテとレセプトは根本的に違うものであり、どんな小さな診療所でも、これらを全て手管理と言うことはまずない。
 大抵はカルテからレセプトを作成するためのコンピューター(レセコン)を用いているものである。
 ところが、レセプトを電子媒体で提出している診療所はほとんど無い。電子レセプトを採用しているのは、大病院(約25%)か保険調剤薬局(約60%)ぐらいのものである。 
 
 さて、レセプトが審査支払機関に提出されると、そこでまず一次審査が行われる。
 これは請求内容が保険診療として相応しいかどうかをチェックするわけであるが、そのチェックは人の眼による目視である。
 たとえ電子レセでも、紙のかわりにオンライン画面をみるだけであって、機械的にデータに対するロジカルチェックを行うわけではない。
 だからチェックの甘い辛いが発生するし、漏れも出る。

 一次審査を通過すると、とりあえず保険診療が認められる。
 すなわち、審査支払機関から医療機関に診療報酬が支払われ、その代金は保険者に請求することになる。そして請求書たるレセプトが保険者に送られることになる。
 
 ここで保険者に送られるレセプトは、原則、紙である。だから病院から電子レセプトで請求があっても、わざわざ紙に印刷しているわけである。
 数年前から電子データによる保険者送付も可能となったが、キー項目に画像データを紐付けただけという、データベースとしてはどうにもならないシロモノである。

 さて、保険者は原則紙ベースでレセプトを受け取り、審査支払機関では行わないチェックを行う。すなわち、入院前後の数ヶ月を串刺しする縦覧点検と、院外処方箋を出した病院のレセプトと保険調剤薬局のレセプトを突合してチェックを行う調剤突合点検がメインとなる。点検の結果、問題がありそうなものについては、審査支払機関に再審査申出を行うことになる。
 保険者における縦覧点検と調剤突合点検は、いずれも連名簿というレセプト一覧表を参考にして、手作業で対象レセプトを捜索、抽出し、目視で点検するというとてもアナログなやり方である。非効率なのは言うまでも無い。
 (なお医薬分業の理念自体は別のところにあり、保険診療のチェックを行いにくくすることが主目的ではない。また個人的に縦覧点検の効果には疑問があるが、それは蛇足である)
 ちなみに連名簿自体は電子化されており、データベース足りうるが、レセプトの具体的な中身までは入っていない。

 つまり、病院、審査支払機関、保険者、それぞれが各々の仕事のために電算化を実現しているが、データベースやコードにおいて互換はなく、ときに電子→紙→電子といった非常に非効率な情報伝達の方法を取っている。

 要するに、日本の医療保険請求の電子化状況は、このようなていたらくである。

 なぜこのような状況かと言えば、三師会の圧力が大きい。
 三師会とは医師会、歯科医師会、薬剤師会のことである。2年前の中協医汚職事件が記憶に新しいが、政界や中央省庁とただならぬ繋がりがあるのは言うまでも無い。
 日本で医療保険請求の電子化に、ことあるごとに歯止めを掛けてきたのはこれら三師会なのであり、前述の「保険者への電子レセ送付」を骨抜きにしてしまったのも例に漏れず医師会等の圧力によるものである。
 反対の理由としては「医師各個人の裁量の自由を奪い、画一的な基準によって云々かんぬん」といった内容だったと思う。
 しかし、実際のところ保険者による査定の大半は傷病名漏れなどの要するに「記載不備」や、この項目とこの項目は同時に請求できないといった「請求内容の不備」であり、診療内容まで切り込んでザックリやるというのは余りお目にかかったことが無い。
 もっともらしい理由をかかげてはいるが、要するに「彼ら」にとって保険者や審査支払機関のチェックがやりにくい方が都合が良いのだ。
 どうにも筋が通らないことである。

 あいにく、マスコミは公務員叩きにばかり執着して、このような部分には触れてくれない。非常に残念である。

** 追記 **

 6月25日、記事を一部修正しました(保険者における点検)。
 7月6日、カテゴリーを修正しました。




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 新制度とはいうが、老人にはもともと別立ての保険がある。
 老人保健(保険ではない)というものだ。

 老人は若者の何倍もの医療費がかかる。
 だから国や自治体と保険者が金を出し合い、保険者が単独で運営するよりも老人に負担がかからないようにする仕組みだ。
 老人は国保や社会保険など、何らかの公的医療保険に加入しつつ、老人保健にも加入し、
 病院にかかった出来高に応じて各保険者が負担する仕組みである。

 だが、この制度は破綻しつつある。
 当初の予想以上に老人の医療費がかさみだしたからである。
 それにもともと市町村の国民健康保険と社会保険との不均衡もある。
 (老人は国保加入者が圧倒的に多いのである)

 とりあえず、平成14年に変革があった。
 今まで一律全員1割だった自己負担区分に新たに2割を設け、対象年齢を70歳以上から75歳以上に引き上げ、国や自治体の負担する割合を徐々に引き上げた。
 だが、それでも根本的な解決には至らない。
 だから「新」高齢者医療制度が必要となったわけである。
 
 従来の老人保健と異なり、新保険は独立した保険だ。
 だから、対象老人はもはや国保や社保といった区別は無くなる。
 そして新保険のための保険料が老人から徴収される。これは介護同様、年金天引きである。
 今まで社会保険の家族の扶養に入っていたものは、新たな負担となるわけだ。
 その保険料だけでは足りないから、国保や社保、そして国や自治体からも資金が投入される。
 74歳までの前期高齢者からも年金天引きで、負担が強要されるだけではなく、若年者からも、社会連帯的な保険料を徴収することとしている。
 文字通り社会全体を巻き込んだ制度だ。
 老人でないから自分には関係ないという認識は誤りである。

 その運営主体は、都道府県単位で設置される「広域連合」という特別な地方自治体である。
 しかし、都道府県はその設立準備が円滑に進むよう支援することとされつつも、広域連合自体は区域内の市町村によるものであり、都道府県は加入が義務付けられていない。
 都道府県と市町村が責任を押し付けあった結果である。
 ようするに都道府県は他人事である。これではまとまるものも、まとまるまい。
 大規模なシステム開発も必要となるだろう。しかし期間は余りに短く、分かっていることは余りに少ない。

 前途多難である。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。
10月8日、「都道府県は加入しない。」との表現を「都道府県は加入が義務付けられていない。」に改めました。




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タグリスト: 医療制度改革, 後期高齢者医療制度, 広域連合,
 病院の診療報酬は看護師の数のみならず、患者の平均入院日数によっても大きく左右される。
 その具体的なその算出式は、

 平均在院日数 = 在院患者延べ数 ÷ (新入院患者数+退院患者数)×2

 というものである。
 一番成績のいい病院は平均在院日数20日未満であるが、これがどれくらいの数字かと言うと、100床の病院でベッドが常に一杯の場合、1日あたり5人以上を退院させなければ達成できない数字ということになる。
 並大抵の努力では達成できない。事実、一部の病院では患者の容態が安定しないうちから退院勧告をされるようなケースもある。

 極端なケースでは、病院がわざとベッドをあけることもあるそうだ。分母を大きく出来ないなら、分子を小さくしてしまえという発想である。
 本来入院できるところが入院できなくなるわけだから、こういう状態が患者にとってのぞましいはずもない。
 そして厚生労働省の目論見ともまったく正反対の結果になるわけであり、もちろん病院にとっても苦肉の策である。
よく使われる言葉で三方一両損というのがあるが、これは全く正反対の例である。

 ともあれ、厚生労働省の胸算用は時として思わぬ結果をもたらすことになる。

 では今度の医療制度改正の胸算用はどんな按配であろうか?

 老人は3か月で病院を追い出されるとよく言われる。
 それは今まで、老人の医科点数表において、90日を超えると入院基本料が大幅に減額されていたからだ。
 この残酷かつ強力なルールによって、長期入院の老人は、一般病床から療養病床、あるいは介護へと強制移動させられてきた。
 この点数設定はこれからも変わらない。
 だが7月からの療養病床の診療報酬は、悪名高き「老人90日超えの入院基本料」より採算が取れないかもしれない。
 しかも、老人が入院90日を超えると平均在院日数の算出から除かれるという除外規定がある。
 更には、療養病床に行くことにより、患者の食事代や部屋代が大幅にアップするのである。
 加えて、将来的な療養病床の大幅削減計画がある。

 これでは老人は確実に一般病床に滞る。

 社会的入院は、一般病床から療養病床、そして介護へのスムーズな患者の流れを作ることにより解消される。
 だが、今度の改正は、そのパイプの真ん中を絞るというものだ。
 果たして道を細くすることで高速道路の渋滞を緩和できるのであろうか?
 正しき方策は出口の料金所を広くすることであり、そしてこれは「介護」のことに他ならない。

 「受け皿なき改革」は、病院も患者も不幸にするだけである。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。

 記事中の「老人が入院90日を超えると平均在院日数の算出から除かれるという除外規定」は7月から適用されないことが後に判明しました。




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 「療養病床」というのは余り聞きなれない言葉かもしれないが、最近は医療制度改革関係の報道で耳にする機会が多いのではなかろうか。
 医療制度改革に盛り込まれているのは、以下の2点である。

 ・療養病床の食費と居住費の見直し
 ・介護型療養病床の廃止


 では、療養病床とは一体全体なんぞや、ということだが、マスコミの報道などではただ漠然と長期入院と表現されていることが多いと思う。
 簡単に説明すると、厚生労働省が定めた病床区分の1つであり、その狙いはズバリ医療費の削減である。病院のベッドに「療養病床」をはじめとした区分を設け、病院の機能分化を促進し、社会的入院を解消して、結果として全体の医療費を圧縮する、というのが目的といえる。
 題目だけ見るとすばらしいが、実際の医療の現場では、様々な歪みや問題を生ずる原因ともなっている。それはおいおい説明して行こうと思う。

 「療養病床」の歴史は比較的新しい。平成4年の医療法改正で入院病床に一般病床と区別して「療養型病床群」というものができたが、これが元である。
 病床区分は平成13年3月第4次医療法改正の結果、「精神」「結核」「感染症」「一般」「療養」の5つの区分にわかれ、そして療養病床については、平成12年4月の介護保険法施行の結果、従来からの医療保険型と、介護保険型の、2種類に分かれることになった。
 とりあえず、「一般病床」と「医療型療養病床」の2つに絞って話を進めていくことにする。

 「一般」と「療養」の違いを簡単に説明すると、「一般」が急性期(注1)、「療養」が慢性期(注2)の治療に使用するべきベッドということになる。
 さて、医療費の無駄を語るうえで、常にやり玉に挙げられるのは「社会的入院」である。
 一番望ましくない状態は、緊急の治療の必要の無い患者が、家族が面倒を見ることができないという事情で、いつまでも退院せずにベッドを占領し、そのため本当に治療が必要な方が即座に入院できず、また結果として医療費自体もかさんでしまう、こういう状態である。
 簡単に言えば、「社会的入院」とは、介護を必要とするけど医療はあまり必要としない患者が医療のベッドを占有し続けること。ということになる。
 そういった患者は介護入所施設や在宅で面倒を見てもらうのが一番望ましいが、老人が入院し治療を受けて、峠を越して容態が安定したら、即「介護へ移ってください」というのも無茶な話である。
 その猶予期間的な意味合いで、一般病床と介護保険との間に療養病床が設けられていると言える。

 さて、「療養病床」を語る上で、診療報酬の問題は避けて通れない。
 医療機関は健康保険に基づく医療を患者に提供した場合、保険証の内容とカルテの内容から、診療報酬明細書(俗にレセプトと呼ばれる)を提出し、医療費の7割(老人は8割から9割)を健康保険の保険者に請求することになる。
 もちろん、どういう治療を行ったら幾ら請求できるか、というのは決まりがある。
 いわゆる「医科点数表」というものであるが、正式には「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」、老人のほうは「老人保健法の規定による医療に要する費用の額の算定に関する基準」という長ったらしい名前の告示である。法律でも政令でもない単なる告示なのであるが、これのおかげで医療機関や自治体が散々振り回され、これがために医師会という圧力団体が存在し、またこの暗号のような内容を読み解くための「医療事務」という資格があるわけで、なかなか一筋縄ではいかない、厄介な存在である。

 患者を入院させた際の医療機関の診療報酬は、入院基本料という名のベースの定額部分と、それ以外の検査、処置、投薬などの出来高部分に分かれる。
 入院基本料は基本料といいつつも、その算出方法は非常に複雑である。一般・療養といった病床の区分、看護師の量や平均在院日数や正看護師の比率などによって決まる施設のランク(施設基準)、更には入院日数も考慮して決められることになる。

 なお、今年4月の診療報酬改定で看護師に関する基準が極めて厳しくなり、看護師の引き抜き合戦が起こったり、廃業に追い込まれる病院が続出しているのはあまり知られていない。看護師の転職が多くなり、ベテランやリーダーが育たないというのも悪影響も懸念される。
 この話題については別の機会に話そうと思う。

 さて、診療報酬点数そのものをあげると煩雑になるため、概略的な話で済まそうと思う。

 まず入院基本料は、看護師が患者何人に対し1人か、ということで、7対1、10対1、13対1、15対1、それ以下の5ランクに分かれている。
 病院が7対1などの上位ランクを得るためには、看護師の人数に加え、正看護師の比率や入院日数等、厳しい条件をクリアせねばならない。
 いわば病院の格付けがされているわけである。厳しい基準を満たして優秀な医療機関と認められれば、リターンも大きくなるという仕組みなのだ。
 これに加え、入院日数も影響する。入院初期の、手厚い治療が必要な時期にはボーナスが加えられる。逆に180日を超えると病院と患者、両方にペナルティがある。
 つまり、病院にとっては、患者を集中的に治療してすぐに退院させ、空いたベッドに別の患者を受け入れる、つまりベッドの回転率を上げる手法が最も診療報酬が高くなり、また病院のランクも上がって良いこと尽くめという構図が見えてくる。

 一方で、療養病床の方はだいぶ毛色が違う。今年7月から改定される施設基準によれば、患者に提供する医療の内容と患者のADL支援レベル(注3)により、5段階(特別も含め6段階?)となる。
 合計平均在院日数や入院日数での縛りはない。一般と療養で一番高い入院基本料同士で比較すると、療養の方が高い。
 入院日数などの縛りもないため、随分お得な感じがするが、療養病床の最高ランクは急性期に匹敵する24時間体制の管理を必要とする状態で、今まで比較的医療の必要性が低い療養病床でこのような体制がとれるとは考えづらい。
 つまり、大半は一般より安くなると予想できる。
 更に、療養病床の診療報酬点数は包括である。包括とは何かというと、特別なものを除き、検査、処置、投薬などの普通は出来高の部分が含まれており、追加報酬として認められないということだ。
 DPC(注4)然り、今や包括が流行であるが、乱暴な言い方をすれば、患者に手厚い医療を提供しても儲からない、検査や処置をしてもしなくても同じということである。
 誤解を恐れず言えば、良心的な病院ほど馬鹿を見る構図とも言える。
 こうした事情から、療養病床の診療報酬は潜在的な問題をいくつか抱えていることになる。
(続く)

****
 なお、この情報は平成18年6月初旬の情報に基づく。
 平成18年7月1日からの施設基準についての告示が6月16日に出た(らしい)が、その内容は反映させていない。
 しかし、全国の医療機関に2週間程度で体制を変えろというのは、相変わらず厚生労働省は現場を無視しているのが良く分かる。

注1 一般には病気の発症直後や、症状の変化が激しい時期のことで、容態が安定するまでの集中的な治療が必要な時期を言う。
注2 急性期を脱した状態。症状はあるものの、集中的な治療は必要ない(あるいは役に立たない)
注3 日常生活動作にどれだけの支援が必要かを表す目安。今回の療養病床については、「ベッド上可動性」「移乗」「食事」「トイレ」の4項目からなる。
注4 Diagnosis Procedure Combinationの略。病気と病状を基に定めたれた包括部分と出来高部分を組み合わせた算定方式。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。




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タグリスト: 医療制度改革, 療養病床,
 まず、新聞各社の見出しを飾ったこのテーマから取り上げようと思う。
 負担増、というが具体的にはどれくらいなのであろうか?
 
 以下の図を見ていただきたい。(クリックすると大きくなります) 

一部負担金

 世帯の医療費の上限について、今年の10月から負担がどのように変わるかを表した図である。もしこの額を超えて医療費を負担した場合、高額医療費として役所から払い戻しがある。
 ただし、入院した場合の食事代(標準負担額)や差額室料など、保険適用でない部分についてはこの額に含めることができないので注意が必要である。

 さて、中身を見ていくと、
 まず低所得というのは住民税が非課税の世帯であり、こうした老人には負担の増加は全く無い。
 所得が一般の世帯については、若干の負担増(1か月に4,200円)があることが分かる。
(医療ではなく税制改革、即ち公的年金等控除の縮減及び老年者控除の廃止に伴い結果的に負担が増えるというケースがあるが、話がややこしくなるので割愛する)

 問題なのは一定以上所得者あるいは現役世代並所得者と呼ばれる層、具体的には夫婦世帯で年収約520万円以上、単身世帯で約380万円以上での所得層である。
 負担額上限は約8,000円上昇するが、問題なのは、総医療費に占める患者負担の割合が2割から3割に増加しているところである。
 
 一番上の欄に現役世代の一般所得者、つまり読者の大半が該当すると思われる部分の額を掲載したが、
 10月からは、患者負担の割合も含め、文字通り「現役世代並」の負担を強いられることになるわけである。

 金があるのだから、そうした人には払ってもらおうという思想自体は誤りではない。
 だが、単純に若者と同じ額にしてしまえというものでもない。

 なぜならば老人の医療費は、平均すると現役世代の5倍なのだから。

 更に問題なのは、一般の所得者との格差である。
 ある一線を超えたら、とたんに負担が3倍になるというのは、果たしていかがなものであろうか。
 しかもこの算定基準にはいわゆる土地売却などの一時収入も含まれているのである。

 「生活が苦しくて、ついには先祖代々の土地と家を手放したら、医療費が3倍になった。わしに死ねというのか!」

 厚生労働省の官僚殿にお尋ねしたい。 
 こう訴える市民に対し、我々は何と答えて差し上げればよろしいだろうか。
 国策に専念するのは結構であろうが、もう少し現場にも目を向けてもらいたいものである。



 さて、実はもう1つの負担増がある。
 それは療養病床の生活療養費が自己負担となったことである。
 いわゆる医療費以外の負担について、現在は食事代の一部のみしか負担がない(1か月約24,000円)が、これからは合わせて居住費も負担することになり、トータルで1か月約52,000円となる。
 ところが、これは一般の老人入院患者には関係ない。あくまで療養病床と呼ばれるベッドで入院しているものだけである。
 この問題は実に根が深い。次回以降にゆっくり説明しようと思う。

** 追記 **

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タグリスト: 医療制度改革,
 医療制度改革関連法が14日午前、参院本会議で可決、成立した。

「高齢者の医療費負担増」
 
 朝日、毎日、読売、日経、産経、時事通信、共同通信、
 マスコミはこぞってこのキーワードをトップに用いている。
 とかく高齢者負担増のみにスポットが当たりがちであるが、果たして本質はどこにあるのであろうか?
 老人の医療制度を5年間担当してきた筆者が、行政の現場の目で、今回の改正を鋭く分析してみようと思う。

 さて、今回の医療制度改革については、「高齢者自己負担の見直し」以外の柱も数多くある。
 主なものあげると、

  療養病床の削減
  新高齢者医療制度の創設
  医療費適正化計画

 といったものでもある。また他にも

  レセプトオンラインシステムの導入
  高額医療と高額介護の合算制度

 などについても触れられている。
 いずれも1日で全て語りつくせるテーマではない。

 そこで、数回に分けて連載形式で書いていこうと思う。
 興味が無い読者には申し訳ないが、現役世代にも大きくかかわる話である是非ともこの機会に興味を持ってもらいたい。

** 追記 **

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タグリスト: 医療制度改革,
 さて、情報セキュリティへの関心が高まり、徐々にではあるが、セキュリティポリシーも策定されつつある。
 だが依然として官民問わず個人情報流出事件は後を絶たない。
 つい先日もKDDIにおける400万人もの顧客情報流出が報じられたのが記憶に新しいが、KDDIに限らず、Yahooや楽天、NTTdocomoなど、情報産業の最先端を行くこうした企業や団体が、皆前科持ちなのである。
 もちろん、皆立派なセキュリティポリシーを備えている会社ばかりである。
 
 何が言いたいかというと、つまりセキュリティポリシーは持っているだけでは意味が無いということである。
 策定はあくまでスタートラインなのだ。

 では、良いセキュリティポリシーとはいったい何か?

 月並みではあるが、自分なりの意見を書いてみることにする。


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タグリスト: セキュリティポリシー, セキュリティ,
 情報管理においてCIO(注1)の果たす役割が大きいことは言うまでもない。
 ITに理解が無いものが幹部にいるというだけで、その組織の情報資産価値は半分以下になってしまうといっても過言ではない。

 

 「現職君、このシステム導入の資料、目を通したがね、予算額を大幅にオーバーしているではないか」

 「部長、私は予算要求の段階からその金額が必要だと申し上げておりました。中身も見ずに2割カットされたのは部長ではないですか?」

 「失礼だな君は。中身を見たからそう判断したのだよ。例えば先方からの要件定義資料では、必要容量は3TB(注2)になっているのに、何で300GBのハードディスクが14本も必要なのかね? 4本も余分に水増ししているではないか。」

 「それはRAID5(注3)といって、データの正確性を確保するために必要なのです。以前も説明差し上げたではないですか」

 「そうだったかね? とにかくこんなのでは議会で突っ込まれたときに説明できん」

 「説明してください。RAIDをかけていないということが世間に知られるほうが物笑いになります」 

 「ううむ…。いや、現職君、まだあるぞ。このサーバの免震台は不要じゃあないか」

 「耐震対策のために必要です。本市の条例にも明記されております」

 「何もなしというわけではない。ラックを耐震用に固定すれば良いではないか」

 「耐震(注4)と免震(注5)は違います」

 「どう違うのかね? 要は地震5のときにサーバが倒れなければ良いんだろ?」

 「たとえ転倒しなくとも、サーバが強震されれば、ハードディスクのデータは全て滅失します。それに電子計算機室はビルの上層階なので、実際には震度6強に耐えうる対策が必要です。アンカー打ちの耐震対策だけでは不十分です。システムの可用性(注6)が失われます」

 「いやな、現職君。実は免震台を置くスペースがないんだ。耐震ならスペースを確保できる」 

 「場所の調整はお願いしていたではないですか」

 「うるさい、決まってしまったから仕方がないだろう。他のシステムも耐震だけでやっているんだ。だいたいあのビルだって地震のとき無事かどうか分からんだろう」

 「ならば、業者のサーバをレンタルする等の対策を講じてください」

 「今から出来るわけないだろう。この話はやめだ。次、この馬鹿高い数百万もするソフトはいったい何だ。」

 「不正アクセスを検知、阻止するためのソフトです」

 「こんなものは、ウィルス対策ソフトを入れておけば、全て防げるんだろう?」

 「防げません」

 「君はどうしてまずコストをかけることを考えるんだ? その前にできることを探すべきだろう。例えば、担当課長が毎日、変な線がつながっていないかどうかチェックするという方法でも良いではないか(注7)」

 「…そんなセキュリティポリシーでは本市が笑いものになります」

 「うるさい、いちいち口答えするな! だいたい、君は一番重要な部分で間違っておる」

 「一番重要な部分とは何ですか?」

 「システムの名前だよ! どうして事前に私に相談しなかったのだ!」


 
 自治体は最もクリティカルな個人情報を取り扱う組織である。だからこそ、少なくとも幹部職員は上級シスアド程度の知識を備えているべきである。
 前回、民間企業のセキュリティポリシー策定に対する立ち遅れを指摘したが、そうした意味では自治体のほうもボロボロであると言って良い。

 ※今回登場する人物は全てフィクションです。実在の人物、事件、団体、ならびに作者の個人的怨恨(笑)とは一切関係がありません。

 注1 最高情報統括責任者のこと
 注2 テラバイト。ギガバイトの1000(または1024)倍
 注3 複数のハードディスクの固まりを用い、修復用の符号を付加して情報を保存する技術。
 注4 機器を固定し、転倒を防ぐ地震対策
 注5 振動を吸収する地震対策
 注6 システムの壊れにくさのこと
 注7 変な線とは何であろうか?課長が課内だけではなく全庁ネットワークを毎日チェックするのであろうか?




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 少々固くて難しい話。

 「セキュリティポリシー」とものをご存知であろうか。
 簡単に言えば、「企業や自治体などの団体の情報の取り扱いに関する方針」ということができる。
 昨今の個人情報に関する関心の高まりの中で、にわかに脚光を浴びてきたキーワードである。

 自分は仕事柄、セキュリティポリシーにはうるさい。
 素で5時間でも6時間でも話すことができるが、今回はさわりだけにしようと思う。

 一口にセキュリティポリシーといっても非常に範囲は広い。
 情報資産の分類や定義(セキュリティポリシーの適用範囲)から始まり、組織体制、運用(対策)、罰則や見なおしに関することまで様々である。
 核となるのは情報保護対策たる運用部分であるが、
 それもリスクの種類から大まかに物理的、技術的、人的の3種の保護対策に分けることができる。

 物理的というのは、例えば、

○サーバは震度5に耐えうる程度の耐震対策を施すこと
○消火設備を整えること
○電子計算機室には許可されたものしか入退室できないこと


 など、入退室管理や盗難対策、あるいは物理的な災害に対する対策等である。

 技術的というのは、

○アクセスログを取得し、一定期間保管すること
○クライアントにはウィルス対策ソフトをインストールし、パターンファイルを最新に保つこと
○ソフトウェアをクライアントにインストールするときにはシステム管理者の許可を得ること


 など、不正アクセスやウィルス対策、システムの仕様変更や開発改善時の取扱、アクセス権限管理に関することが含まれる。

 人的というのは、ここが一番の要であるが、

○パスワードは適切に管理し、机の上やクライアントにメモ書きしておかないこと
○私有のパソコンや機器を社内ネットワークに接続しないこと
○個人情報が入った媒体は、鍵のかかる保管庫に保管すること


 など、エンドユーザーレベルの運用や教育に関することが含まれる。

 こうしたセキュリティポリシーは、官公庁ではあるのが当たり前である。
 ところが民間企業は散々たる状態で、聞くところによると上場企業ですら今だたったの4割しか策定されていないそうだ。
 その4割も(後編での話にも関わってくるが)そのうちどれだけが本当に役に立つものかは疑問である。

 民間企業は会社のパソコンで仕事中でもインターネット見放題とのことであるが、これは本当であろうか?
 役所の常識は世間の非常識というが、これは逆の意味で驚きである。

 なるほど、「20万円でセキュリティポリシー策定します」などという商売が成り立つはずだ。
 そりゃあ「情報セキュアド」と「システム監査技術者」を取得して、コンサルタント会社を立ち上げて大もうけなどという餅も描きたくなるものである。

 冗談はさておき、
 ともあれ、日本の情報セキュリティはようやく関心が高まってきたところで、未だ黎明期であるということが言えよう。
だが、個人情報保護法のみならず、2008年には日本版SOX法も制定される。
 日経ソリューションの調べでは関連市場は1兆円近くになるということだ。

 ビジネスチャンスである。
 今こそ「情報セキュアド」と「システム監査技術者」を取得して、コンサルタント会社を立ち上げて…
(しつこい)




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6月9日、改正住基台帳法が成立し、原則営業目的の閲覧が禁止となった。

第11条
 何人でも、市町村長に対し、当該市町村が備える住民基本台帳のうち第7条第1号から第3号まで及び第7号に掲げる事項(同号に掲げる事項については、住所とする。以下この項において同じ。)に係る部分の写し(第6条第3項の規定により磁気ディスクをもつて住民票を調製することにより住民基本台帳を作成している市町村にあつては、当該住民基本台帳に記録されている事項のうち第7条第1号から第3号まで及び第7号に掲げる事項を記載した書類。以下この条及び第50条において「住民基本台帳の一部の写し」という。)の閲覧を請求することができる。

第30条の29
 都道府県知事又は指定情報処理機関が第30条の5第1項又は第30条の11第1項の規定による通知に係る本人確認情報の電子計算機処理等を行うに当たつては、当該都道府県知事又は指定情報処理機関は、当該本人確認情報の漏えい、滅失及びき損の防止その他の当該本人確認情報の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。

 上記は住民基本台帳法という同じ法律の中の条文である。
 一方では「住所・氏名・生年月日等を誰でも閲覧できる」といい、もう一方では「住所・氏名・生年月日などの情報が漏洩しないようにしっかりとやらなければならない」と書いてあるのである。
 これほど矛盾した法律も珍しい。

 いわゆる「住民票」は、昭和26年、住民登録法の制定により生まれた。
 このころプライバシーという概念は存在せず、住民票は文字通り誰でも閲覧することができ、その理由さえ問われることはなかった。
 住民票の写し(謄抄本)は手書きである。そして当時の役人はカーボン複写職人であった。

 プライバシーという概念が初めて登場したのは、昭和36年、三島由紀夫の「宴のあと」事件だといわれているが、現在の住民基本台帳法はそれより後の昭和42年に制定された。
 やはり、住民票は誰でも閲覧することができるた。

 最初の国産コピー機が登場するのはそれより3年後、昭和45年のキャノン「NP1100」である。
 これにより初めて情報の容易な複写が実現できるようになったといっていい。
 IBMが初めてリレーショナルデータベースを発表したのもこのころである。

 こうした「情報複写技術」の進歩を受け、個人情報に基づいたダイレクトメールの送付が行われるようになったのは昭和50年代からである。
 これが後に社会問題になった。
 昭和60年に改正のチャンスがあったが、結局政府は「正当な閲覧理由を記載すること」という政令を付け加えただけで、第11条にはメスを入れなかった。
 誤解を恐れずに言えば、名実ともに「ザル法」と化したわけである。

 政府の言い分としては、

  1.ダイレクトメール以外にも学術調査やマスコミのアンケート調査利用等、
   様々な経済活動に利用されている。
  2.ダイレクトメールを受領する者が必ずしも不快とは限らない。

 の2点があった。

 20年以上前の当時であれば、その言い分は通ったかもしれない。
 だが時代は急速に変わっていった。
 パソコンがどんどん普及し、性能の良いHDDが登場して、情報の複写はますます容易になった。
 時代が昭和から平成に変わり、役所から流出した住民票の情報がWindowsやUNIXサーバのリレーショナルデータベースにどんどん蓄積されるようになっても、政府はこの取り扱いを改めようとはしなかった。
 住民基本台帳の閲覧件数は年間1,000万件を超えるところまでに達していた。

 とはいえ、政府も無頓着だったわけではない。
 個人情報保護の気運の高まりを反映し、ストーカー規正法や個人情報保護関連法などが次々と成立した。

 だが「第11条」は生き残り、個人情報を流出し続けた。
 異様な事態といって良い。

 ついには自治体の反乱も起きた。
 熊本市で全国で始めて住民票の閲覧を制限する条例が成立すると、全国各地で同様な条例が次々と制定された。
 「条例」が「法律」を規制するという滅茶苦茶な事態である。

 そしてついに、名古屋市において、わいせつ目的で住民票の閲覧制度を悪用した男が逮捕された。マスコミも政府の対応の立ち遅れを非難し始めた。

 それから1年余り、ようやく第11条は変わろうとしている。
 日本にプライバシーの概念が認知されてから、実に45年後のことである。

****
「住基台帳閲覧は中止した方がよくないか?」
「どこよりも詳しい個人情報ブログ」

** 追記 **

 7月6日、リンクを修正しました。




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タグリスト: 個人情報保護, 住民基本台帳,
 公務員の給料は民間準拠といいつつも、実態は民間よりも3割高い。

 そういう調査結果が出たことがある。
 果たして本当に高いのであろうか?

 以下に興味深いデータがある。

 全都道府県職員の平均給与 529万円
 (男女同一、勤勉手当、期末手当を含まない)
http://www.soumu.go.jp/iken/kyuyo.html

 民間企業の平均給与 男性 554万円 女性 224万円
 (5000人以上の事業所、ボーナスを含まない)
http://www.j-tgs.com/value/salary/01.html

 お分かりであろうか?
 確かに平均は公務員のほうが高い。
 しかし男性は民間とほとんど格差がない。そして女性は倍以上違うのである。
 以前、公務員の現業職は給料が高いと言うことを述べたが、こうしたことも考慮して、男性のホワイトカラー同士で比較すれば、確実に民間のほうが給料が高いといえよう。

 民間は男女の給与格差が激しく、単にその差が公務員と民間の人件費の差となって表れているに過ぎない。
 つまり、いかに民間で女性が不当に扱われているか、逆に女性にとって公務員が良い職場であるかを示しているとも言える。

 要するに、公務員は女性が不当に扱われない結果、民間より平均給与や人件費が高く表れるわけである。

 それを叩くのはお門違いではなかろうか?
 むしろ、民間女性の労働環境の向上を求めていくべきだろう。

** 追記 **

 6月10日、リンクの貼り方が逆だったので修正しました。




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タグリスト: 公務員, 給与水準,
 シンドラーエレベーター社製のエレベーター事故と「公務員叩き」とは密接な相関関係がある。
 たまにはこんな「とんでも話」でもしてみようと思う。

 今朝のニュースでシンドラーエレベーター社(以下「シンドラー社」)は「当社の保守点検を受けていないエレベーターで事故が起きたことはとても残念である」といった趣旨のコメントを出していた。(公式か非公式かはわからない)
 見方を変えれば、「当社の保守点検を受けていないのだから、エレベーター事故は当社の責任ではない」とも受け取れる内容である。まず責任の所在を明らかにするという、外資系企業らしい行動であるが、中にはこれを聞いて腹を立てた方も多いであろう。
 とはいえ、この「製造」と「保守」の責任切り分けが、これからの刑事や民事訴訟の大きな争点になっていくのは疑いない。

 そもそも、なぜ港区住宅公社は、製造元のシンドラー社ではなく、エスイーシーエレベーター社に保守管理を委託していたのであろうか?
 喩えるならば、トヨタの車をマツダのディーラーに点検に出したり、ソニーのVAIOをNECフィールディングで修理してもらうようなものである。
 他社でも点検や修理は出来ないことはなかろうが、そのマシン固有の特性は、製造メーカーが一番ノウハウを蓄積していることは疑いない。

 しかしながら、それを証明するのは難しい。
 「保守」というのは一番費用対効果が推し量りにくい「製品」だからである。

 例えば、貴方が新車を購入し、半年ごとに定期点検を受けて、3年後に故障もなく車検を迎えたとする。
 3年間トラブル無しで過ごせたのは定期点検のおかげかもしれないし、単なる偶然かもしれない。もし定期点検がなくとも3年間トラブル無しで居られたのならば、変な話、定期点検に費やしたコストは無駄だということになる。
 それを確かめるためには、ほぼ同じ使用条件で「保守点検あり」と「保守点検なし」とのトラブル発生率を調査するしかない。メーカーはこうしたデータを蓄積しているかもしれないが、ユーザー側からこうした情報を知ることはほぼ不可能である。

 一方で、行政が相当高額の商品(委託サービスも含む)を購入する場合、入札か随意契約(いわゆる随契)によることになる。

 入札は、行政が示した条件をクリアし、かつ最も低い価格を示した業者が契約権を獲得する仕組みである。
 「条件」は入札仕様書により示されるが「保守」の仕様というのは難しい。
 定量的なこと、例えば「月に1回以上点検を行うこと」「故障時には通報から2時間以内に修理対応にあたることのできる体制を確保すること」などは容易に盛り込むことができる。

 定性的なことはどうであろうか。
 「故障発生率は概ね1%以下であること」「稼動率は99%以上であること」ということは、盛り込むことはできても、その証明や確認は不可能である。
 なぜならば確率なのだから。
 10%でも1%でも故障するときは故障するのである。
 「故障は年3回以内であること」と実績値で書くこともできよう。しかし、業者はそれを達成できなかったら契約違反となり、違約金や指名停止等、様々なペナルティを受けるのである。
 こんな仕様書に「フダ」を入れる業者は絶対に居ない。
 
 要するに、入札による保守契約では質を確約することはできず、ノルマ量だけ満たした「安かろう悪かろう」の保守になる可能性は十分にある。
 そして、そのせいでトラブルが起きたとしても、それを実証するのは非常に困難なのである。

 製造メーカーと契約するのが望ましいのならば、随契という手段もある。 
 随意契約が出来る条件は「地方自治法施行令第百六十七条の二」に記載があるが、

  第一項の「少額随契」
  第二項の「競争入札に不適」

 の2つが最も良く使われる理由である。
 悪名高い某省庁の、契約自体を細かく切り刻み、第一項の「少額随契」を適用するという手法は論外である。
 となれば第二項を適用するしかないが、そのためには「保守管理契約は絶対にシンドラー社でなければならない合理的な理由」を示さなければならないのである。
 そして前述のとおり、シンドラー社に任せるのが一番具合が良いことを証明するのは難しい。
 随意契約の理由としては明らかに弱いといわざるを得ない。

 何より、世は公務員叩き、行政叩きの時代である。
 その性質や中身も吟味せず、「随契は悪だ!」と決め付ける方々も少なくない。
 とにかく随契の「ず」の字でも出そうものなら、世間様にボコボコに叩かれるという風潮が蔓延しているのである。

 もし、裁判で「事故は製造ではなく保守の責任である」ということになり、「製品を一番熟知している製造メーカーに保守委託を任せなかった行政にも事故発生の責任がある」ということにでもなったら大変である。
 皆が公務員を叩いて、担当者に随契を思いとどまらせたために事故が発生してしまったことになるのだから。
 
 要するに、公務員を叩いたためにエレベーター事故は起こってしまったということである。 
 というわけで、皆、公務員を叩くのをやめましょう。


 ** 蛇足 **

 今回の話は「風が吹けば桶屋が儲かる的」なジョークである。
 しかし、1人の高校生が亡くなったことはもちろん冗談では済まされない。
 行政にも責任の一端がある可能性があるし、それはこれから徐々に明らかになっていくであろう。

 ともあれ、市川さんの冥福を祈るのみである。




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2006
0602

 平成19年2月より、ブログをリニューアルするにあたり、新しいスタイルに相応しくない記事や情報が古く誤解を招きかねない記事を過去ログとして移転した。
 また今後も記事を移転することがあり得る。あしからずご了承いただきたい。

 過去ログの閲覧にはパスワードが必要で、原則非公開としたいが、当blogと相互リンクを結んでいただいているサイトの管理人の方、また過去ログの該当記事にリンク、コメントやトラックバックをしていただいていた方のご要望があれば、パスワードをお伝えしようと思う。
 その場合にはお手数だが右下のメールフォームよりその旨ご連絡いただきたい。

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