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 そろそろ12月4日の資料が全市町村にいきわたるころでないかと思う。

 一部の資料を除いて公に電子データのものは出回っていないから、ここ数日間で全国で莫大な量の紙が消費されたことは想像に難くない。
 直接出席された事務局や市町村が電子データを起こそうにも、あの文字や図の細かさとページ量では困難であろう。
 厚生労働省の担当の方もお疲れとは思うが、もう少し環境保護に配慮していただきたいものである。

 それにしても、介護、後期高齢、国保の特別徴収関係の資料の厚さが目を引く。
 後日詳しく触れることになるとは思うが、市町村の介護システム(特別徴収部分)の改修は不可避であろう。
 厚生労働省から(市町村の)介護サイドにはどれだけ情報提供しているのであろうか?
 
 今まで(11月22日まで)の資料についても、良く読み込めば、介護システムの改修の可能性は読み取ることができる。
 しかし、市町村の予算要求というものは「漠然とした可能性」や「想像」だけで出来るものではない。
 12月議会の時期になって、後期高齢担当課の職員が介護担当課に「あの分厚い資料」を渡して、
 「来年の秋までに改修お願いします」
 といったら、間違いなく介護担当職員は激怒するだろう。
 そこらへん、もう少し考えていただきたいものである。



 さて今日は別の話、より薄っぺらい資料から片付けようと思う。
 被保険者証にすりこむQRコードの話だ。
 
 被保険者証へのQRコード刷り込みはいくつかの健保や共済が先行して行っている。
 いずれ義務化になるとのことであるが、後期高齢の証でも刷り込むことを想定している。

 QRコードの中には被保険者番号や記号番号など、証の基本的な情報が盛り込まれており、
 医療機関の窓口で読み取って記号番号等の転記誤りを防ごうという試みだ。
 単なる医療機関の書き間違いが、医療機関や保険者、審査支払機関に無益な労力を強いているという分析はそのとおりで、うまく機能すれば有難い話だ。
 将来的には各種保険の資格情報をどこかで一元管理し、即時に使える証かどうかを判別する「オンライン資格確認」の構想もある。

 このQRコード、携帯で読み取れて、記号番号などの中身を見ることができるらしい。
 インターネットを検索すると、「やってみた」というblogがたくさん出てきた。誰しも考えることは同じである。
 こういうのは一業界で複数規格があっては意味が無いから、後期高齢のものも恐らく同じだろう。
 「暗号化しなくて大丈夫か?」という意見もあったが、被保険者証の表面に堂々と書いてあることなぜ暗号化する必要があるか、逆に聞いてみたい気もする。
 QRコードが偽造防止にならないことさえ承知しておけば、別に何の問題も無いだろう。

 さて、厚生労働省はこのQRコード導入で資格過誤の4割が削減可能と試算しているが、これは大風呂敷だ。

 まず母集団が誤っている。
 厚生労働省は16年度支払基金における資格過誤調整件数を元に試算しているが、全国の後期高齢担当課(老人保健担当課)職員を毎月悩ます「一部負担金割合の誤り」は区分の誤りとなるため、資格過誤ではなく事務上過誤に計上されるはずであり、試算の母集団には入ってないと思われる。
 この数は、本市では資格過誤の約5割程度の実績があり、決して無視できない数だ。
 そして証回収前の受診については、返戻による過誤調整を行うことが(医療機関の協力が無い限り)できない。
 そうしたレセプトについては、被保険者(受給者)に不当(不正)利得の返還を求めたり、現行老人保健であれば支払基金を通じて拠出金の調整を行うわけだが、こうした件数も母集団には含まれていない。

 余談だが、医療機関の窓口事務というのは想像以上に過酷だ。担当者の給与も資格過誤の件数によりペナルティが課せられる場合もあるという。
 成績を上げようとすれば「保険者や役所からレセプト返戻の電話がかかってきたら、とにかく「証を見た」としか答えないこと」というマニュアルが出来てもおかしく無い。
 少なくとも私が医療機関や薬局の管理者ならそうする。厚生労働省が診療報酬体系で締め付け、病院の経営が苦しくなればなるほどその傾向は強まるだろう。

 話を元に戻す。
 母集団もこれだけ違うわけだが、中身の内訳についても怪しい部分がある。
 いわゆる「認定外家族」の過誤事由がどこに含まれるか、ということだ。
 「扶養を切られたが証が差し替え(訂正)されていない」というのは記載誤りというより喪失後受診に近いわけだが、
 この件数が「旧証によるもの」や「その他」ではなく「本人家族の誤り」に含まれているのなら、これも誤り要素の1つである。

 何より、医療機関がQRコードを読み取る機械を導入しなければ効果が無いわけだが、
 筆者の主観では、記号番号誤りを起こす医療機関は未だに手書きレセの診療所等が多いような気がする。
 レセコンすら導入しないのに、QRコード機器導入に理解が得られるかどうかは甚だ疑問だ。

 以上より、QRコードによる削減効果はせいぜい2割もあれば良いほうではなかろうか。
 「(連合会を含めない)基金サイドの資格過誤」という極めて特殊な条件下では4割に近くなるかもしれないが、それは実態を正確に表してはいない。
 正味では2割あれば御の字であろう。

 誤解しないでいただきたいのは、筆者はQRコード導入に反対しているわけではない。
 本当の効果はその次のステップ「オンライン資格確認」まで到達しないと得られないということだ。

 「オンライン資格確認」は今までむしろ導入されていないのが不思議なくらいで、クレジットカードでもキャッシュカードでもまず有効かどうか確認してから処理を行うわけだが、
 資格があるかどうか、本人のものかどうかも分からない証に大金を「見切り」で払ってくれる業界はここだけである。

 筆者が懸念するのは、
 大風呂敷を広げたことにより、「予想ほどの効果が無いじゃないか」と叩かれ、第一段階だけで頓挫してしまうことである。
 この試みは「オンライン資格確認」まで行かないと意味が無い。
 広げてしまった風呂敷は元に戻せないから、まずは三師会を説得し、医療機関や薬局への浸透を早期に図るべきだろう。

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 診療報酬請求制度のIT化といって、まず真っ先に連想されるのはお隣の国、韓国である。 

 日本のレセプト電子化の状況は前回述べたが、病院と診療所と薬局でならすと約25%になる。ところが、韓国の電子化率は96%である。
 日本はレセプトの点検や審査を紙ベースの目視で行い、審査支払機関だけでは不十分であるから保険者からも再審査が行われることも述べた。ところが韓国では原則電算上のロジカルチェックしか行われず、目視で内容を精査するのは非常に例外的なケースである。審査支払機関でのチェック後に保険者が再審査を申し出することはない。

 当然人件費も大きく異なる。レセプトが同じ枚数だとすると、韓国における審査支払機関の職員数は、日本のわずか1/4である。審査委員の数は1/8である。なおかつ日本では保険者サイドでも人件費をかけて点検や管理を行っている。この点も考慮すれば、差は歴然である。

 もちろん電子化の効果はこれだけではない。
 全国民5年分、100TBとも言われるレセプトのデータウェアハウスを活用できる強みがある。
 
 実際、韓国に出来て、日本で出来ないことを列挙してみよう。

 ○疾病の流行状況の把握。
 ○患者単位での医薬品の併用禁忌チェック。
 ○不適正な医薬品や血液製剤発生時における、投与患者の検索、追跡調査、補償。
 ○レセプトデータの医学研究への活用。
 ○手術の成功率等、様々な側面からの医療の質評価。
 ○正確な特定傷病患者数の把握。


 この業界の人間であれば、一番最後の項目を見て「おや?」と思われたかもしれない。これについては後で詳述することにする。 

 さて、日本と韓国はどうしてこうも差がついてしまったのか?

 理由の1つとしてコード化がある。

 韓国は1991年にようやく国民皆保険が実現した。決して日本以上に歴史が古いわけではない。
 だが、紙ベースの時代から電子化をにらみ、徹底したコード化の対策に取り組んできたのである。

 日本で電子レセを推進するに当たり、大きな問題となっているのが、傷病名や各種点数表項目のコード化である。
 日本でも韓国でも、特定の診療行為を評価する際には、ベースとなる「基本点数」とボーナスである「加算部分」を組み合わせる方式である。
 例えば、「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」は「再診料」というベース部分に「乳幼児」であることの加算と「時間外」であることの加算が考慮される。
 これは日本でも韓国でも同じである。

 日本の点数表は、この基本点数と各種加算にそれぞれコードが振られている。つまりコードから求めた値を演算しないと「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」を求めることが出来ない。
 ところが、韓国の点数表では「診療時間外に受診した乳幼児の再診料」というコードが存在する。演算は必要ない。
 電算処理を行ううえで、どちらが有利かは言うまでもないだろう。

 また日本の医療機関ではいわゆる「レセコン」は導入しているが、電子レセの普及は進まないことは以前に述べた。
 要するに、医療機関の立場からすれば、電子レセに切り替えるメリットが余り無いのである。(特に診療所)
  
 その点、韓国は徹底的な利益誘導を行った。

 まず、電子の場合は医療機関に診療報酬を早期に支払い、逆に紙請求の場合は支払を遅らせたのである。
 これは効果的だ。日本でも電子も場合はボーナスが付くが、反面患者負担額にも反映するという悪影響がある。
 当時の韓国での深刻な不況も追い風となった。
 加えて、電子レセに切り替えると、最高6か月間、レセプト審査が免除されるという思い切った施策も行った。
 導入当初だけでなく、1年間行政処分が無いと2年間審査免除というプログラムも併用している(ただし抜き打ち検査は行われる)。
 たとえ査定されても、その理由や内容が細かく書いてあり、病院側が再発防止にフィードバックさせやすいということも好印象となった。
 かくして韓国のレセプト電子化はあっという間に浸透したわけである。
 
 もう1つの深刻な問題として、いわゆる「保険適応病名」問題がある。
 
 業界人であれば周知の事実であるが、日本では「保険病名」あるいは「適応病名」と呼ばれる、保険請求専用のウソ病名がある。
 ある診療行為が患者にとって明らかに必要だとしても、保険として認められないことがある。だからウソ病名を付けてしまえという発想である。
 例えば長く使うと肝臓に負担がかかり、投与中は定期的に肝機能検査を受けなければならないという薬がある。もちろん検査にも相応のコストがかかる。薬のために検査をし、その分持ち出しでは採算が取れない。
 「だったら肝臓の病気にして保険診療として認められるようにしてしまえ」ということなのである。
 もし「強い薬で胃を痛めるから」と併せて胃薬が処方された場合、貴方は胃潰瘍にされているかもしれない。ということだ。
 自分は保険者サイドの人間であるが、この世界に入って長いし、友人に腹を割って話せる医者も数多くいる。両方の内情は理解しているつもりだ。
 誤解を恐れずに言えば、医療機関の診療報酬請求は不正ギリギリのグレーゾーンの領域で行われている。そうしなければならないのは、つまり制度が悪いのである。

 医療機関は請求に不備が無いように、本当の病名によるレセプトを作成したあとで、適用病名を継ぎ足す作業を行う。そして保険者は適用病名もれをくまなくチェックし、バッサリ切りにかかる…。

 こんなナンセンスなことに病院と保険者はしのぎを削っているのである。しかも国保などであれば人件費はつまり税金だ。皆も無縁の問題ではない。
 どちらがが悪い、どちらに責任があるということではなく、こうした(少なくともレセプト電子化という面から見れば)悪しき慣習は無くしていかねばならないと思うのである。

 脱線が過ぎた。こうした話は別の機会を設けてゆっくり書こうと思う。

 本題に戻るが、こんな状態では、せっかく電子化が成されても、データの信用性が低く、使い物にならないのは言うまでもない。
 「胃潰瘍」で検索したら、その中に「なんちゃって胃潰瘍」が数多く混入しているのだから。
 ちなみに韓国ではこうした「保険病名」問題は無いそうであり、質の高い医療情報を確保することが可能なのだそうである。

 さて、こうした問題以外にも、解決せねばならないことは山積みだ。
 もし「レセプトオンライン」という夢のような話を実現するためには住基ネットと同等またはそれ以上のセキュリティを確保せねばならないし、導入費用や基盤整備の問題もある。

 5年間で完全実施できるかどうかはいささか疑問だ。
 ともあれ、現実的な問題として、毎月運ばなければならない多量の紙の山が早く無くなってくれるのを祈るのみである。

** 追記 **

 7月6日、カテゴリーを修正しました。




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 レセプトオンラインの話に移る前に、まずこの国の現状を説明せねばならない。

 保険診療が行われた際、医療機関が患者負担額を控除した額を審査支払機関を通じて健康保険に請求し、その請求書はレセプトといい、医科点数表をもとにしていることは既に述べた。
 http://genshoku.blog69.fc2.com/blog-entry-5.html

 レセプトは紙でも電子媒体でも請求が可能である。
 カルテとレセプトは根本的に違うものであり、どんな小さな診療所でも、これらを全て手管理と言うことはまずない。
 大抵はカルテからレセプトを作成するためのコンピューター(レセコン)を用いているものである。
 ところが、レセプトを電子媒体で提出している診療所はほとんど無い。電子レセプトを採用しているのは、大病院(約25%)か保険調剤薬局(約60%)ぐらいのものである。 
 
 さて、レセプトが審査支払機関に提出されると、そこでまず一次審査が行われる。
 これは請求内容が保険診療として相応しいかどうかをチェックするわけであるが、そのチェックは人の眼による目視である。
 たとえ電子レセでも、紙のかわりにオンライン画面をみるだけであって、機械的にデータに対するロジカルチェックを行うわけではない。
 だからチェックの甘い辛いが発生するし、漏れも出る。

 一次審査を通過すると、とりあえず保険診療が認められる。
 すなわち、審査支払機関から医療機関に診療報酬が支払われ、その代金は保険者に請求することになる。そして請求書たるレセプトが保険者に送られることになる。
 
 ここで保険者に送られるレセプトは、原則、紙である。だから病院から電子レセプトで請求があっても、わざわざ紙に印刷しているわけである。
 数年前から電子データによる保険者送付も可能となったが、キー項目に画像データを紐付けただけという、データベースとしてはどうにもならないシロモノである。

 さて、保険者は原則紙ベースでレセプトを受け取り、審査支払機関では行わないチェックを行う。すなわち、入院前後の数ヶ月を串刺しする縦覧点検と、院外処方箋を出した病院のレセプトと保険調剤薬局のレセプトを突合してチェックを行う調剤突合点検がメインとなる。点検の結果、問題がありそうなものについては、審査支払機関に再審査申出を行うことになる。
 保険者における縦覧点検と調剤突合点検は、いずれも連名簿というレセプト一覧表を参考にして、手作業で対象レセプトを捜索、抽出し、目視で点検するというとてもアナログなやり方である。非効率なのは言うまでも無い。
 (なお医薬分業の理念自体は別のところにあり、保険診療のチェックを行いにくくすることが主目的ではない。また個人的に縦覧点検の効果には疑問があるが、それは蛇足である)
 ちなみに連名簿自体は電子化されており、データベース足りうるが、レセプトの具体的な中身までは入っていない。

 つまり、病院、審査支払機関、保険者、それぞれが各々の仕事のために電算化を実現しているが、データベースやコードにおいて互換はなく、ときに電子→紙→電子といった非常に非効率な情報伝達の方法を取っている。

 要するに、日本の医療保険請求の電子化状況は、このようなていたらくである。

 なぜこのような状況かと言えば、三師会の圧力が大きい。
 三師会とは医師会、歯科医師会、薬剤師会のことである。2年前の中協医汚職事件が記憶に新しいが、政界や中央省庁とただならぬ繋がりがあるのは言うまでも無い。
 日本で医療保険請求の電子化に、ことあるごとに歯止めを掛けてきたのはこれら三師会なのであり、前述の「保険者への電子レセ送付」を骨抜きにしてしまったのも例に漏れず医師会等の圧力によるものである。
 反対の理由としては「医師各個人の裁量の自由を奪い、画一的な基準によって云々かんぬん」といった内容だったと思う。
 しかし、実際のところ保険者による査定の大半は傷病名漏れなどの要するに「記載不備」や、この項目とこの項目は同時に請求できないといった「請求内容の不備」であり、診療内容まで切り込んでザックリやるというのは余りお目にかかったことが無い。
 もっともらしい理由をかかげてはいるが、要するに「彼ら」にとって保険者や審査支払機関のチェックがやりにくい方が都合が良いのだ。
 どうにも筋が通らないことである。

 あいにく、マスコミは公務員叩きにばかり執着して、このような部分には触れてくれない。非常に残念である。

** 追記 **

 6月25日、記事を一部修正しました(保険者における点検)。
 7月6日、カテゴリーを修正しました。




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